音の連続による音の変化を意識して発音する

ここまで英語らしい発音を実現する視点として、個々の音(①アルファベットの音、②母音、③子音)を正確に発音すること、単語の中の④音の強弱と⑤音節を意識して発音することを述べてきました。そこで、今回から2回にわたってさらにネイティブ・スピーカーの発音に近い発音を実現するための視点と練習方法について述べることにします。その第1弾は「音の連続による音の変化」です。

 

以前にも述べたことですが、Get out of here!(ここから出て行け!)をネイティブ・スピーカーはけっして「ゲット・アウト・オブ・ヒア!」とは発音しません(わざと「出・て・い・け!」とゆっくり強調して言う場合を除く)。彼らの実際の発音は「ゲララヒァ!」のように聞こえます。もちろん、この台詞を言うときはたいてい興奮していて早口になっているということもあるでしょう。しかし、そのような条件を除いたとしても、ここにはネイティブ・スピーカーに特徴的な発音の仕方-つまり「音の連続による変化」-があります。それを理解していないと相手の言っていることを単語に分解してイメージできません。いずれも中学校1年生で習う簡単な単語の連続なのに、何を言っているのかさっぱりわからないということです。

 

音の連続による変化はなにも英語だけではなく日本語にもあります。例えば、くさ(草)とはな(花)が連続すれば「くさな」になりますし(連濁)、あめ(雨)とおと(音)が連続すれば「あおと」となります(転音)。もちろんこれらを「くさはな」「あめおと」と発音する人もいますが、正しい日本語を使おうとしている人が聞けば「ん?」と思うにちがいありません。また、場合によっては他のことばだとかんちがいしてしまうかもしれません。

 

さて、ここからが本題です。英語の音の連続による音の変化には次のようなものがあります。

・音の結合

・音の脱落

・音の同化

もちろんこれらは音声学的にはさらに細かく分けられますが、そのすべてについて述べていると教科書1冊分の量になってしまうので、それぞれの中でもっとも気をつけておきたいものに絞って述べていくことにします。

 

(1) 音の結合

音の結合には主に「語中」のものと「語間」のものがあります。これら2つについてそれぞれ見てみましょう。

 

① 語中の音の結合

語中の子音と子音の結合を意識しないで日本人がそれを発音すると、いわゆる”ジャパニーズ・イングリッシュ風”の発音になってしまいます。例えば、spring という単語の最初の3文字は子音字で母音がないので、s と p 及び p と r の間には母音の発音はありません。ところがこれを日本人は「supuringu」と発音します。最後の g に母音を付けるのも問題ですが、同様に問題なのが s と p の後ろに付けた母音 u です。本来、この単語には母音は i しかないので全体で1音節の単語ですが、日本語のように発音すると母音4つで4音節の単語になってしまいます。これだけ音節数がちがうとまずネイティブには同じ単語には聞こえません。つまりこれは通じない発音になります。

 

そこで、ここでは子音が連続する単語の発音の練習をしましょう。よく使う単語ですから気をつけてください。キモは「子音が連続している間は絶対にそこに母音をはさまないこと」です。

 

[2連続](語頭)speak, play, cream, drink, tree, fruit, three, twice

     (語中)object, napkin, active, captain, atlas

     (語尾)twelve, pulse, wild, salt, help, milk, rhythm, helped, hundredth

[3連続」(語頭)splash, strike, scratch, square

     (語尾)text, sixth, twelfth

 

② 語間の音の結合

語間の音の結合を上手に言えるようになると、文として英語らしい発音となると同時に早く文を言えるようになります。例えば、in an hour を「イン・アン・アゥア」と1語1語をバラバラに発音するのではなく、「イナナウァ」のように連続して発音します。

 

では、いくつかの典型的な例を紹介します。各表現の右に簡易的にカタカナでその発音を記しておきますので、参考にしてください。ただし、カタカナ表記なので本来入っていないはずの母音が含まれていることがあります。つづりを見て母音字のないところは子音の後ろに母音を付けないように(例:[ト]は[to]ではなく[t]に)してください。

 

・an ocean[アウシュン]

・take it[テイット]

・far away[ファウェイ]

・turn out[ターウト]

 

(2) 音の脱落

音の脱落は、やや改まってゆっくりした会話では発音される母音や子音がくだけた速い会話では発音されないで落ちてしまう現象のことです。上の音の結合と異なるのは、ゆっくり発音すれば聞こえる音が聞こえなくなるという点です。 

 

① 語中の弱母音

単語を発音記号で見たときに[ə]で表される音(弱母音)の多くが、くだけた速い会話では脱落してしまうことがあります。結果として日本語になっている外来語でも少し異なった発音になります。

 

・camera[キャメラ]→[キャラ]

・family[ファミリ]→[ファリ]

・history[ヒストリ]→[ヒストゥリ]

 

② 語間の子音の連続

前の単語の最後の子音と後ろの単語の最初の子音が連続している場所では、しばしば音の脱落が起きます。たいていは前の単語の最後の子音が落ちてしまいます。特に、[t]と[d]の場合が多いようです。

 

・postcard[ポストカード]→[ポスカード]

・handbag[ハンドバッグ]→[ハンバッグ]

・don't know[ドントノウ]→[ドンノウ]

・send back[センドバック]→[センバック]

 

(3) 音の同化

2つの音が連続するときにに、一方の音が他方の音に性質が似てしまう現象のことです。つまり、つづりを1つずつ見ればちがう音なのに、連続することで一方のが他方の音と同じような音になってしまうことを指します。ただ、これはそれほど意識しなくても発音すれば結果的にそうなってしまうはずです。

 

① 進行同化

前の音に後ろの音がひっぱられて、後ろの音が前の音に似てしまう例です。

 

・open[オウプン]→[オウプ

 

② 逆行同化

後ろの音に前の音が影響して、前の音が後ろの音に似てしまう例です。後ろに続く単語を意識するあまり起きる現象と言えるでしょう。

 

・input[インプット]→[イプット]

・that point[ダットポイント]→[ダッ()ポイント]

・have to[ハヴトゥ]→[ハトゥ] 

・has to[ハズトゥ]→[ハトゥ]

 

③ 融合同化

隣接する2つの音が互いに影響し合って両者に似た別の音が生じてしまう例です。

 

・Won't you[ウォントユー]→「ウォンチュ-」

・Did you[ディドユー]→「ディジュ-」

・this year[ディスイヤ]→「ディシュイヤ」

 

<まとめ>

最後に、以上のことを踏まえて冒頭で紹介した Get out of here! がなぜ「ゲララヒァ!」になるのかを確認してみましょう。まず、get と out の間で get の t がほとんど聞こえなくなって「ゲラウ」となります。続いて out と of の間で out の t がほとんど聞こえなって「アウラヴ」となります。そして of と here の間で of の f がほとんど聞こえなくなって「オヒア」となってしまいます。これらを連続して速く言うと「ゲララヒァ」となるというわけです。

 

以上が音の連続による音の変化でした。これらを意識せずともきちんと言えるようになったら、あなたの発音はネイティブ並になったと言えるでしょう。ぜひ頑張ってください。筆者も引き続き頑張ります。

 

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