一般動詞の疑問文の do はいったいどこから来たのか?

「そんなことは考えたことはないよ。」というのが多くの方のご感想かもしれませんね。一般動詞の疑問文に do, does, did を使うのは当たり前のこととして学んで来て、超基本的事項だと思ってきた人には特にそういう思いがあるでしょう。

 

しかし、英語の基本であるbe動詞の文と一般動詞の文を疑問文(あるいは否定文)について比べてみると、面白いことがわかります。

 

<be動詞の文>

(平叙文)      You are a student.

(疑問文)Are you       a student?

<一般動詞の文>

(平叙文)  You like tennis.

(疑問文)Do you like tennis?

 

be動詞の疑問文は?(クエスチョン・マーク)が加わっている以外は平叙文と使われている要素が同じです。理科的に言えば、「質量保存の法則」(?)とでも言えるでしょうか。ところが、一般動詞の文ではどこからともなく do が登場してきています。同じ英語の文なのに変だと思いませんか?もちろん、「一般動詞の文では動詞を文頭に出す代わりに、助動詞(この場合は do)を文頭に置いているだけだ」と説明することはできます。でも、この do はいったいどこから来たのでしょうか?

 

これについては、きちんとした言語学的な説明は一端置いておいて、次のように解釈するといいと言われています。

 

まず、高校の英語まで勉強した人なら、次のような文を習ったことを覚えているでしょう。

 You do like English.

この文は、「あなたは英語が(大)好きなんですね。」と直後の動詞の意味を強調する、いわゆる「強調構文」だと言われているものです。このような文があるということは、もう今回の問いに対する答えが出ています。

 

そうです。「do は元々平叙文の中にあった」というものです。

 

ところが、強調構文ではない通常の文では、do が隠れてしまっています。どこに隠れているかと言うと~これはかなりこじつけなのですが~、「動詞の後ろ側」と考えるとわかりやすいですね。もちろん、それは書き言葉だから言えることで、話し言葉では後ろに隠れているもなにも、そんなことはわかりません。しかし、元々は平叙文の中にあり、動詞の後ろに隠れていたものが、いざ疑問文を作るというときになって、威力を発揮するために前面に出てきた、と考えると説明がつきます。

 

先述したように、今回の説明はきちんとした言語学的な解釈に基づいたものではないのですが、1921年に日本に初めて理論的な英語科教授法を根付かせた組織で、現在は広く理論的な英語教育の普及に貢献している(財)語学教育研究所の会員もここで紹介した解釈をとっているので、あながち嘘ではないと言えるでしょう。(11/7/2018) 

 

英語教師の方々へ

今回の説明も、授業で生徒に疑問を投げかけ、生徒から出てくるいろいろな反応をとらえて進めていくと面白い授業ができます。

 

do がなぜ平叙文では動詞の後ろに隠れてしまっているのかという点については、筆者は授業で次のように説明(生徒とやりとり)しています。

 

教師:do は恥ずかしがり屋さんなんです。恥ずかしがり屋さんが『恥ずかしい』と思ったら何をする?

生徒:隠れる!

教師:そうですね。どこに隠れるでしょう?

生徒:動詞の後ろ?

教師:そのとおりです!

生徒:な~んだ。

教師:でも、恥ずかしがり屋の do も勇気をふるって前に出てくることもあるんです。どういう時だと思いますか?

生徒:疑問文を作る時?

教師:そうですね。他には?

生徒:否定文を作る時!

教師:そうです。そういう時は、do は「よ~し、疑問文を作るぞ!」と勇気を振り絞って目に見えるところに出てくるだけでなく、文頭まで出て行って「これから疑問文を言うよ!」と相手に伝えるんです。

生徒:(「本当かよ?」とあきれた顔で苦笑いをする)

教師:まあ、恥ずかしがり屋かどうかは別にして、「元々そこにあるが、普段は隠れている。しかし、疑問文や否定文を作る時にはそれが前面に出てくる」と考えれば、今回の疑問に対する答えになるでしょ?

 

生徒は狐につままれたような顔になりますが、この話はみんなよく覚えていて、しばらく経ってから同じ質問をすると、すぐに答えが出てきます。それだけ印象的な話として頭に焼き付いているということです。ぜひご自身の生徒に合った説明の仕方を考え、生徒とやりとりをしながら、「ストンと落ちる」授業をしてみてください。

 

なお、今回の続編として、「3.doesはdoが動詞のsを奪ってdoesになったのか?」を用意してあります。