尊敬する人

「あなたが尊敬する人は誰ですか?」。面接などでよく尋ねられる質問に、みなさんはどうお答えになるでしょうか。ご両親? 恩師? 上司? 親友? タレント? 人それぞれでしょうね。

 

筆者の場合も、上記のような視点で尊敬する人が何人かいますが、今回は実在の人物ではなく、ある小説の主人公を「尊敬する人」として紹介したいと思います。

 

それは、作家・今野敏(こんのびん)氏の小説『隠蔽捜査』シリーズの主人公・竜崎伸也です。同作品は、シリーズのタイトルともなっている第1作が大変評判であったために次々と続編が出版され、現在は第9作『深花 隠蔽捜査9』が『小説新潮』に連載中です。警察小説としてとても面白いので何度かドラマ化もされており、そちらをご覧になった方もいらっしゃるでしょう。

 

その主人公・竜崎伸也とは、警察官僚、いわゆるキャリアの警察官なのですが、私たち一般人が“常識”として重んじている人間関係の「あ・うんの呼吸」のようなことには一切関心がなく、「原理原則こそが正しい」という信念を持って生きているという人物です。彼の周囲の人間達はみな最初は彼を「変人」扱いし、時に憤慨して彼に反抗したりもしますが、いつの間にか彼の言う「原理原則」が正しいのではないかと思わせられたり、原理原則で突き進む彼の活躍に心を打たれたりして、最終的にはみな彼を尊敬するようになります。

 

小説の中の人物ですから多少の(かなりの?)誇張もあるわけですが、日頃は自分が育ってきた習慣や価値観などでなにげなく過ごしていることが、竜崎の目から見ると「バカらしい」と切り捨てられる様を読んでいると、ハッとするとともに自分の生き方ははたしてどうなのだろうかということを考えさせられます。そして、読んでいるうちに「自分も竜崎のように生きられたら、さぞや痛快だろうな…」と思わせられてしまうのです。

 

実は、この本の存在を知ったのは、今からちょうど3年前に大きな手術をしたことで3ヶ月の病気休暇をとって自宅療養をしている最中でした。妻が「暇だったら面白い本があるから読んでみたら?」と本棚にあった第1話の文庫本を貸してくれたのです。。読み始めた途端にどんどん話の内容に引き込まれてしまい、読み終えたところで古本屋であるだけすべての続編を買って一気に読んでしまいました。その後は今野敏の他の小説も読み始めて計85冊を読み終えていますが、やはり竜崎伸也の『隠蔽捜査』シリーズが最高です。

 

現実の世界ではなかなか彼のようには生きられないかもしれませんが、少しでも彼に近づいてみたいと思ってしまうのは、筆者が彼を「尊敬する人」だと思っているからでしょう。(11/27/2021)

 

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