子孫か分身か

もう2ヶ月近く前のことなのですが、ようやく春めいた気候になってきた3月上旬のある日に、昨年の夏以来ずっと空になっていた花壇とプランターに花を植えようと、家の西側の軒先に放っておいた土入りのプランターを見に行きました。そうしたところ、そのうちの4つから何かが頭を出しています。よくよく見るとそれはチューリップの葉や芽でした。昨年の春に咲いた後にほったらかしにされて、カラカラに乾燥した土に入っていたにもかかわらず、残っていた球根から新たな芽が出てきたのです。まあ、実は昨年の花もその前の年の球根から出て咲いたものだったのですが…。

 

そのけなげな、というかたくましいチューリップの芽を見ながら花が咲いているときの姿を想像しているときに、ふとタイトルの疑問が頭に浮かびました。うまり、球根はその花の子孫なのか分身なのかということです。

 

植物の多くは花を咲かせるとそこから種ができ、その種がどこかに運ばれてまた新たな命として育ちます。チューリップも花が咲くわけですが、そういえば種は見たことがなく、売っているのは球根ばかりです。普通の花では、種であればそれは「子孫」であり、花はその子孫を残して枯れてしまいます。ところがチューリップは球根を残して再び翌年にそこから芽を出すわけです。ですから、この球根というのは「子孫」とは考えにくく、どちらかと言えば「分身」のように思えるが…などとそんなことを考え始めました。

 

夜になって妻にこの疑問について話すと、まったく興味を持ってもらえず、「どうでもいいことじゃない」とあしらわれてしまいました。しかし、私は納得できません。そこで、その場でスマホで調べてみました。そうしたところ、筆者の予想はほぼ合っていました。

 

チューリップは花を咲かせるので種も作りますが、種から育てると花が咲くまで5年くらいかかるそうです。しかも、自分のめしべに他の花のおしべの花粉がつくので、できあがった種は”両親”の遺伝子を持った「子供」になるわけです。ところが、”父親”が赤い花で”母親”が黄色い花であった場合、その”子供”の花の色は咲いてみないとわからないそうです。一方、球根は花が咲き終わった後に自分の根に近い部分の葉が膨らんでできるものだそうで、だとすればそれは「分身」、つまり自分の遺伝子だけをもった「クローン」となります。そうすると、次の年に咲く花の色も形も予想できるわけで、花屋さんで球根の色や形が写真で示されているのはそのためだそうです。

 

ところで、球根には大きく6種類あり、チューリップはその中では「鱗茎」という部類に含まれるものだそうです。この部類のものは、花が終わると土の中にある一番下の葉に養分が集まり、それがふくらんで球根になります。その葉はたいてい2~3枚あるので、”分身”の球根も2~3個できるのが普通だそうです。この部類には、ヒガンバナ、ヒヤシンスなどの花の他に、タマネギ、ニンニク、ラッキョウなどがあります。そういえば、チューリップの新しくできた分身の球根はニンニクやラッキョウのような形をしていました。

 

ただし、その“分身”球根はそのままだと花が咲くほど十分に大きくなれないのだそうで、少なくともあと1年は待たなくてはならないそうです。中には咲くものもあるそうですが、細くてか弱い花になるそうです。確かに、昨年の花はそうだったように思います。どうやら今年のは葉っぱだけが育って次の年に花を咲かせるための準備の生長と思われます。

 

ふ~ん、なるほど~。今回の疑問は解決しました。久しぶりに勉強になったなあ…。(4/29/2023)  

 

「つぶやき」メニューに戻る 

「ホーム」に戻る