「できていたこと」から「できること」へ

今年の8月に都内の大学病院に入院していたときに、筆者が以前に担任した、ある卒業生(Aさん)からメールが届きました。どうやら筆者がそのときに書いた「つぶやき」の記事を読んで、心配になったようでした。

 

Aさんは、中2のときにいわゆる起立性調節障害で休みがちになった生徒でした。この病気は、よく言われるような精神的なものではなく、実際に身体が思うとおりに動かなくなる障害です。Aさんも当時は通学途中の電車の中で何度か倒れてしまったということがあったので、大変だったことでしょう。

 

驚いたのは、Aさんが高校に入ってから車椅子生活になったことでした。それを知ったのは、身体に障害のある子供たちを支援する団体の広報誌に、車椅子に乗ってインタビューに応えるAさんの姿を発見したからでした。

 

Aさんは現在、医学部に進学すべく猛勉強中です。実は最近になって正式な病名がわかり、それを理解して受け入れてくれる大学を自分で探したそうです。同学年の仲間がすでに大学を卒業した年齢になってから、しかも大変な状況をかかえながらのチャレンジです。

 

しかし、Aさんのことばはとても前向きでした。その中で、「『できていたこと』を探すのではなく、『できること』を実行する」ということばが特に印象的でした。そのような境地に至ったことはきっとAさんの強みとなっていることでしょう。

 

筆者も、若い頃に比べるとできないことがいくつもあり、大きな病気を抱えることでさらにできないことが増えて、この先どうしたらいいのかと悩むことがあります。しかし、Aさんのことばに、自分も今できることを一所懸命やろうと勇気づけられました。(12/2/2023)

 

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