外国語のような日本語

こちらは「日本語のような外来語」と反対に、元々日本語なのに外来語(または外国語)だと思われているものです。カタカタ表記をされたり、外国語に根付いてしまったものなど、まぎらわしいものがいくつかあります。それらをご紹介しましょう。ただ、日本語のような外来語ほど数は多くないので、海外では通じない「和製外国語」も含めることとします。

 

(1) 外国語の衣をかぶった日本語

 

◇スバル

今のところ思いつく唯一のことばです。富士重工業株式会社(現「SUBARU」)の自動車のブランドとしてカタカナや英語(SUBARU )で表記されることから外来語だと思われがちですが、実はれっきとした日本語です。

 

「スバル」と聞いて、「♪さらば、すばるよ~♪」という谷村新司の「昴(すばる)」という歌を思い浮かべる人も多いでしょう。その「昴」こそ「スバル」の語源です。「すばる」とは、夜の星空にかがやく「M45」または「プレアデス星団」(Pleiades)という散開星団を表す和名で、同社の車のフロントにあるマークはその星団の姿を現しています。「すばる」という語は、その星団の名前の由来にもなった「一カ所に集まる」という意味の動詞です。したがって、「ばる」と言うよりは「する」と発音する方が正しいのではないかと思います。なお、アメリカでは SUBARU は「スバルー」 と発音されています(筆者が留学していた1983年はそうでしたが、今は変わっているかもしれません)。

 

(2) 海外では通じない和製外国語

 

◇電子レンジ(electric range?)

英語の授業で家の中の物を英語で表す練習をしたことがある人であれば知っていますね。電子レンジは英語では microwave oven(「マイクロ波のオーブン」という意味)で、単に microwave と呼ばれることも多いです。ところが、「料理用ストーブ」を表す「レンジ」(range)ということばが与えられているので、「電子」を electric に変えて electric range と表したくなります。まったく通じないということはないかもしれませんが、一般の人にはわからなことが多いとされています。

 

 

◇シュークリーム(shoe cream?)

洋菓子の定番として人気のある「シュークリーム」ですが、そのまま使えば文字通り「靴クリーム」という靴磨き用のクリームを表すので、I like shoe cream. などと言うと、相手の頭の上に「?」が浮かんでしまうでしょう。「シュークリーム」は元々フランス語の chou a ala creme(シュー・ア・アラ・クレーム)から来ています。creme は英語では cream のことなので、日本ではフランス語の「シュー」と英語の「クリーム」が合体した語になったようです。

 

◇マンション(mansion?)

日本では簡易で安い集合住宅を「アパート」、少し高級な集合住宅を「マンション」と呼んでいます。そこで、マンションの住んでいることを伝えたくて I live in a mansion. と言うと、相手は目を見開くかもしれません。それは、mansion とは「高級な邸宅」を表すからで、おそらく相手はあなたの家が「豪邸」であることを想像するでしょう。英語ではたとえ「マンション」に住んでいるとしても apartment house、または単に apartment と言うのが普通です。

 

なお、同じような例では「ペンション」もあります。日本では洋風な外観で食事に洋食を提供する民宿を指す語として使われています。しかし、pension とは本来「年金」を表す名詞ですので、英語としては通じません。ただし、ドイツ、オーストリア、イタリア、スペインなどでは比較的低価格で小規模なホテルを「ペンション」と呼ぶことがあるので、まったく通じないことばではありません。日本のペンションもこれにならって名付けられたものと思われます。

 

◇カンニング(cunning?)

試験中にずるをして答案を書くことを日本では「カンニング」と言いますが、これをそのまま英語で使っても通じません。cunning とは「こざかしい、ずるい」という意味の形容詞だからです。おそらくこの形容詞が日本では名詞になってしまったのでしょう。ちなみに、「カンニング」にあたる英語は cheating です。

 

◇シャープ・ペンシル/シャーペン(sharp pencil?)

英語の授業で身の回りの英語の練習をしたことがある人なら、「へえ、シャーペンって mechanical pencil って言うんだ…」と思ったことがあるでしょう。そのまま sharp pencil と言うと、文字通り「鋭い鉛筆」という意味になってしまうので、先が鋭くとがった鉛筆を想像させることになるでしょう。

 

では、なぜ日本では「シャープ・ペンシル」と呼ばれるかと言うと、この機械式鉛筆を最初に大ヒットさせたのが「シャープ」という会社だったからです。そうです。今では電気製品メーカーとして有名なあの「シャープ」です。そのシャープが開発した機械式鉛筆ということで、その後は例え他社の製品であっても「シャープ・ペンシル」と呼ばれるようになりました。

 

このような“和製英語(外国語)”は他にもたくさんあります。ぜひ自分でも調べて見てください。 

 

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