Engage!「婚約しろ!」?

新コーナー第2弾の今回は、「よく耳にする」と言っても、ごく普通によく耳にするというものではなく、筆者が好きなドラマでよく耳にする表現です。そのドラマとは…?

 

それは『スター・トレック』(Star Trek)です。このドラマのことは、「つぶやき」のページで過去に「19. 私の大好きなドラマの話」でご紹介しました。したがって、ここではそれについて詳しくは述べませんが、そのドラマの中でよく聞かれるいくつかの表現について取り上げたいと思います。中にはドラマの台詞としてしか使えないものもありますが、使い方を工夫すれば、ちょっとしゃれた表現として使えるかもしれません。

 

○Engage!

まず、タイトルにもなっているこの表現ですが、辞書などで調べると、「従事する」「携わる」などが主な意味として載っています。もちろん、「エンゲージ・リング」ということばから日本人にもなじみのある、「婚約する」という意味もあります。

 

さて、ドラマでは、この表現は「(宇宙船の)発進!」という表現で使われています。おそらくそれは、「(敵と)交戦する」や「(歯車を)かみ合わせる」という意味でも使われているからでしょう。数ある『スター・トレック』シリーズの中では、『新スター・トレック』(Star Trek: The Next Generation)の中でピカード艦長(Captain Picard)だけが言う台詞です。

 

なお、ピカード艦長は「発進!」というシーンで他に "Make it so."(それをそうしなさい) と言うこともあります。ただし、これだけでは "it" が何を指すのかわかりませんから、直前に他の人がその内容を言っている時に限ります。例えば、操舵手(Navigation Officer)が "Course laid in, sir."(コースを設定しました)と出発準備が整ったことを報告した後に発せられる台詞です。

 

ちなみに、他の『スター・トレック』のシリーズでは、他に「発進」という意味で次ような表現を耳にします。

・Hit it! …「スイッチを入れろ」ということですね。

・Take us out! …「私たちを外に連れ出せ」、つまり「基地から出発しろ」ということです。

 

○Affirmative.

直訳すれば、affirmative は「肯定的な」という意味ですね。これがドラマ中だと、命令に対して「了解!」とか、確認要請に対して「そのとおりです。」というような意味で使われています。positive を使う場合もあります。 

 

では、この反対の意味で使われる単語はと言えば、「否定的な」という意味の Negative. です。命令に対してそう言う場面はあまり多くありませんが、「こちらの攻撃は敵に打撃を与えたか?」などという無線連絡に対して、"Negative."(いいえ、ダメでした)のように返事をする場面をよく耳にします。

 

ちなみに、「もちろん了解です!」とか「あったりまえよ!」のように大げさに肯定の返事をするときに、"Big A!" とか "○uckin' A!"(いわゆる四文字ことば) などと言うことがありますが(『スター・トレック』には出てきません。少し下品な兵士が登場する戦争映画などでよく聞きます)、この "A" とは affirmative の頭文字であるようです。

 

○On my way.

これは "I'm on my way." と言われることもあります。中学校で習う on my way to~(~に育途中の)と同じものですが、出頭要請などに対して、「今から行きます。」という意味で使われています。すでに「行く途中です」なんて、日本で言えば「今行くところでした…」という、そば屋の出前のような言い分けみたいですね。

 

○ETA

この台詞は、『スター・トレック』だけではなく、宇宙船や飛行機が登場するドラマや映画でしばしば耳にします。ETA とは、estimated time of arrival(到着予想時間)の頭文字を取ったもので、たいていは士官の誰かが艦長(機長)に報告する時に使われます。"ETA, 15 minutes." のように使われます。

 

ただし、略語はあくまでも業界の専門用語なので、一般人にどの程度浸透している表現かわかりません。筆者の記憶では、飛行機の中で機長が乗客に到着予想時間を言ったときは、略語ではなかったと思います。

 

以上です。このドラマには、このドラマ独特の表現がたくさんあります。発放送から50年以上経った今も新シリーズが作られている人気ドラマなので、本国アメリカはもちろんのこと、世界中でそれらの台詞は人々の脳裏に焼き付いています。したがって、それらの台詞やそれをもじったと思われる表現が他のドラマや映画、小説などにパロディーとして登場することもしばしばです。それらはいつか改めて別のページで紹介しましょう。

 

元に戻る