I'm coming!「私は来ている」?

タイトルの表現の説明の前に、この文で使われている "come" という動詞の意味を確認しておきます。

 

中学校で(今では小学校で)英語を習い始めるとすぐに出てくる一般動詞として go と come があります。前者は「行く」、後者は「来る」という意味であると習いますね。ところが、英語でこの2語を使う場合、日本人が「行く」、「来る」と発言するのとは少しちがう使い方をします。

 

例えば、「ディズニーランドへ行きたいか?」と相手に尋ねる場合に、英語ではしばしば次のような2つの言い方があります。

 

① The Students' Tickets for Disneyland are 50%-off tomorrow.  Do you want to go there?

② Tom and I are going to Disneyland tomorrow.  Do you want to come with us?

 

①のような場面は日本語でも「行きたいか」で問題ありませんが、②のような場面は普通は「行きたいか」とは言っても「来たいか」とは言いませんね。ですので、②のような場合に日本人が作文すると go を使いがちなのですが、実際には come を使うことの方が普通です。

 

このちがいはどこからくるかと言うと、"go" は発言者の意識が「出発点」にある時に用いる語で、"come" は発言者の意識が「到達点」にある時に用いる語だからです。つまり、①の場合は自分も相手もまだ「出発点」にいることを前提に話しているので、go を使います。一方、②の場合はすでにトムと自分はディズニーランドに一緒に行っている(来ている!)状況を頭の中に描いており、そこに「あなたも加わるか」、すなわち「あなたも来るか」という発想をするのです。実際にはまだそこに行っていなくても、意識の上でそこにいることを想定していれば、come を用いるというわけです。

 

では、タイトルの文はどういうときに用いられるかというと、現在進行形を使って上記のような場面を思い浮かべているわけですから、自分がすでに「到達点」にいる姿を想定して「そこに向かっている(来つつある)」という意味で使われているのです。

 

そのような意味で使われる具体的な場面としては、電話が鳴ったときに「自分が出るよ!」と言うとき(電話に出ている姿を想定している)、ドアの呼び鈴が鳴ったときに「いま行きます!」と言うとき(ドアを開けている姿を想定している)、自分の部屋にいたときに食事の用意ができたという連絡が来たときに「いま行くよ!」と言うとき(ダイニングに着いている姿を想定している)、などがよくある場面として思い浮かびます。

 

逆に、上記のような場面で日本語で「今行きます」と考えて直訳した "I'm going!" と行ったらどういうことを伝えてしまうのでしょうか。go が自分にとっても相手にとっても「出発点」での発言になりますから、「いま出て行くよ」、つまり「出かけるよ」みたいな意味になってしまいます。

 

go も come も簡単な動詞ですが、正確に使うにはその動詞の持つ本来の意味をしっかりおさえた上で使いたいですね。タイトルの表現は、ドラマや映画などで上記のような場面があると頻繁に耳にする表現ですから、注意して聞いてみてください。実際に使われている場面を自分のものにできれば、きっと go と come の使い分けも自然にできるようになるでしょう。

 

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