人を表す単語には大きく2つの種類があります。1つはそれぞれまったく独自の形を持った単語で、cook(料理人)、student(生徒)、child(子供), adult(大人)などがあります。もう1つは元の単語の後ろに何かしらの接尾辞が付いて「~する人」という単語になるものです。
後者についてはおおむね次のように分類できます。
(1) 動詞に接尾辞が付いたもの
・play(~する) → player(~する人) ・visit(訪れる) → visitor(訪れる人)
(2) 名詞に接尾辞が付いたも
・art(芸術) → artist(芸術家) ・account(会計) → accountant(会計士)
上記では、(1)は他にも数えきれないほどの例があります。中には実際には存在しない単語なのに、動詞に "-er" を勝手につけた造語すら見かけます。
さて、あまり例は多くないのですが、(1)の中に接尾辞のちがいで正反対の立場の人を表すものがあります。それが "-er/-or" と "-ee" です。主な組み合わせの例は以下のとおりです。
① interviewer - interviewee ※interview(面接する)
② employer - employee ※employ(雇う)
③ trainer - trainee ※train(鍛える)
④ abductor - abductee ※abduct(誘拐する)
上記の左辺と右辺の単語のちがいは、左辺が「~する人」、右辺が「~される人」を表すことです。つまり、①「面接者」-「面接受験者」、②「雇用者」-「労働者」、③「トレーナー」-「トレーニング受講者」、④「誘拐者」-「誘拐された人」の組み合わせになります。
お恥ずかしい話ですが、筆者が各組の右辺のような単語があることを初めて知ったのは教員になって4年目のことでした。その年に英検の二次試験の面接官をやるようになって、試験官を examiner と言うのはわかっていましたが、受験者を examinee と言うのだということを英語の説明を聞いて知りました。
そのときに面白い組み合わせだなと思って調べてみたところ、上記のような単語があることがわかりました。それ以来、abduct の組み合わせはあまり聞きませんが、interviewee、employee、trainee はニュースなどで度々耳にするように(気づくように)なりました。ちなみに、これらの単語はすべて "-ee" の部分を強く発音します。
なお、これらの単語は昔からあったものではなく、19世紀後半に "-er/or" の方が先に報道関係で使われ始め、のちにその反対の立場の人を表す "-ee" が造語として使われ始めたそうです。そう言えば、上記の単語の組み合わせは新聞記事などでよく見かける単語ですね。上記の4つの組み合わせ以外にも、ある業界では使われているような "-er/-or" と "-ee" が付く単語の組み合わせもあるようです。もともと比較的新しい造語として始まった表現のようですので、そういうこともあるでしょう。