前置詞の使い方①:on は「~の上に」ではない

前置詞は大変多くの英文に使われています。個々の前置詞の意味もそれほど難しくありません。しかし、私たち英語学習者-特に初学者-にとっては、前置詞を正確に使いこなすのは意外に難しいようです。そこで、今回から3回にわたって前置詞を取り上げ、より正確に前置詞を使えるようになる方法を説明します。その第1回は on を例にして、前置詞の基本を学びます。

 

on は中学校の教科書ではかなり早い段階で出てきます。It's on the desk. などのように場所を表す前置詞句(後ろに名詞を伴ってまとまりのある意味になるもの。ここでは on the desk)や  I play tennis on Sunday. のように時間を表す前置詞句(on Sunday)のように使われます。この時、教科書の後ろにある辞書には、「~の上に」「(曜日など)~に」などと意味が書かれています。これはこれでいいのですが、on がそのような意味であるということだけを覚えていると、それにそぐわない使い方をしている文が出てきた時に困ることになります。それが私たちが前置詞を使いこなせない一番の理由なのです。

 

では、on にはどのような意味があると考えればいいのでしょうか。次の例文を見てください。

 

・Look at the book on the desk.

・Look at the clock on the wall.

 

それぞれで、the book(本)と the clock(時計)がどこにあるかイメージしてみてください。本は「机の上に」にあるのでわかりやすいですが、時計は「壁に」ではあっても「壁の上に」ではないですよね。一方、次のような文では( )に入る前置詞は何でしょうか。

 

・Look at the light (    ) the ceiling.

                 

「天井の電灯」で、天井の下にあるわけですから、under かと思えば、実はこれも on です。

 

それぞれの物の位置が、それがある場所に対して上、横、下にあるのに、なぜみんな on を使うのかを考えてみてください。ヒントは、それぞれの物とそれがある場所の位置関係です。

 

そうですね。the book は the desk と、the clock は the wall と、the light は the ceiling と「接して」います。つまり、on は「~に接して」ということを表す前置詞なのです。

 

この感覚は、前置詞ではなく副詞として使われている on にも表れています。

 Turn on/off the light.(電灯(のスイッチ)をつける/切る)

部屋の電灯のスイッチを見てもわかりにくいので、理科の教科書で見た豆電球の電気の配線図を思い出してください。スイッチを「入れる」と「切る」はそれぞれどういう図で表されていたでしょうか。

 

そうです。スイッチを入れる(on)はスイッチの両側が「接している」、切る(off)はそれが「離れている」ように描かれていますよね。

 

以上のことから、前置詞の正しい使い方をマスターするための第一歩は、それぞれの前置詞が持つ「本来の意味」を理解することです。教科書や辞書には、手っ取り早く意味を理解するために、いくつかの例文と共に典型的な意味が載っていますが、それらを1つ1つ覚えているだけでは、咄嗟の時や迷った時に使い分けられません。それよりも、各前置詞の「本来の意味」を理解して、その意味を伝えられる前置詞を選ぶようにした方が、より正確に前置詞を使えるようになるのです。(11/15/2018) 

英語教師の方々へ

前置詞は、冠詞と共に生徒がその使い方に迷う品詞です。それに対して、「~の場合は〇〇を使う」ということをひたすら教えているだけでは、生徒はいつになっても前置詞を正確に使えるようにはなりません。最も大切なことは、上記で取り上げたように、個々の前置詞が持っている本来の意味を生徒に理解させることです。

 

on の使い方については、某有名予備校のテレビCMでちょうどここで取り上げた話が“神授業”として紹介されています。このような基本的なことが“神授業”などともてはやされるのは、逆に言えば多くの学校の授業で教えられてこなかったことを表しています。あと2回分用意している話と合わせて、ぜひ学校の授業で取り上げてほしいと思います。

 

授業で扱うには、予備校の先生のように講義調で一方的に話すのではなく、上記の説明のように、まずは問題点を投げかけ、それに対する生徒の考えを拾い、生徒の考えを整理しながら、最終的に生徒に答えを出させるような指導過程をとるようにします。そうすれば、生徒が自分で答えに達することができたという喜びを感じることができます。また、その過程で生徒の頭はフル回転しますから、飽きずに参加しますし、居眠りをするというようなこともありません。