does は do が動詞の -(e)s を奪って does になったのか?

まず、自分が三単現の疑問文を習った際に、「三単現の疑問文では、平叙文で動詞の後ろについていた(e)sを do が奪って does になったので、動詞の後ろの (e)s は無くなる」という説明を受けていたかどうかによるのですが、どうでしょうか?

 

教科書には昔も今もそのようなことは書かれていませんが、より丁寧な説明が必要な参考書にはそのように説明しているものもあり、そう思い込まされた人も多いのではないかと思います。

 

ただ、そのような説明がなかったとしても、do と does のちがいを考えると、動詞の後ろにあった (e)s が do に移動したと考えると、疑問文や否定文で動詞が原形であることの説明がしやすいので、ほとんどの人はそのように思ってきたと思います。

 

それはそれでいいのですが、今回は少しちがう説明をしてみようと思います。それには、「2.一般動詞のdoはいったいどこから来たのか?」が重要な働きをするので、未読の方はそちらを読んでから再度こちらに来てください。

 

「2.一般動詞のdoは…」では、「do は元々文の中にあった」としました。だとすると、does の場合はどうなのでしょう?

 

そうです。does も元々そこにあったのです。それは does が使われる強調構文を見ればわかります。

Tom does like soccer.

 

「2.一般動詞の doは…」では、「普段は do は動詞の後ろに隠れている」としました。ということは、does も動詞の後ろに隠れていることになります。そこで、does を like の後ろに隠してみましょう。

does 

  +   

like 

  ↓    

likes

 

そうです。「頭隠して尻隠さず」ということわざがありますが、like の最後尾に does の -s が顔をのぞかせて likes となっているのです。もちろん、この説明は書き言葉だからできることで、話し言葉では通用しません。しかし、強調構文では単独で does が単独で存在し、動詞の後ろに (e)s がついていないことから、このように解釈する方法もあると言えます。

 

そこで、「2.一般動詞の do は…」と合わせて次のようにまとめてみます。

 

① do や does は元々文の中に存在し、主語によってどちらかを選ぶ

You do like tennis.

Tom does like soccer.

② しかし、普段は do や does は(動詞の後ろに)隠れている

・You like tennis.

・Tom likes tennis.

③ 疑問文や否定文ではそれが表に出てくる

Do you like tennis.

・Tom does not like tennis.

④ do も does も表に出てきたので、もはや動詞はその影響を受けない

 

いかがでしょうか? このように説明した方が、「平叙文で動詞の後ろについていた (e)s を do が奪って does になった」と説明するよりも“ストンと落ちる”(納得できる)のではないかと思います。(11/8/2018) 

英語教師の方々へ

今回の説明は、生徒をアッと言わせる(狐につままれたように思われる?)ものです。それは、教科書でも参考書でも塾でも教えてはくれないし、そもそもそれまで考えたことなどなかったことだからです。

 

筆者は三単現を教えてしばらくしてから、「ところで do や does はどこから来たんだろうね?」と生徒に問いかけて話をします。生徒がいろいろな答えを言ってきますので、どの答えも大切にしながらも、目的とする答えにたどり着くように誘導していきます。

 

この話をするのには、黒板に文を書きながらやるよりも主語(I, He)、動詞(play, go, have)、目的語(tennis)、do、does の単語カード(裏面にマグネットをつけるとなおよい)を用意することをお勧めします。そしてできれば、使う動詞は does より見かけ上短いものを選び、カード自体も短く作成するようにします。その理由は…

 

 does      does

   +          +

    like   go

      ↓          ↓ 

    likes    goes

 

そうです。上記ではカード部分が示してないのでわかりにくいかもしれませんが、like と go を上手に does より短く作ると、does を動詞の後ろに隠した時にちょうど does の -s または -es が動詞の後ろから顔を出すのです。ですから、カードを上手に使い、生徒とやりとりをしながら、does が動詞の後ろからお尻を出すことを示します。

 

この一見すると“子供だまし”のような表示法は生徒にとても受けます。さらに、have のカードも用意し、a と v の間に切り込みを入れておきます。そして、「have の時はちょっと化学反応をするんだけど…」と言って、その切り込みの部分に does を挟み込むと has ができあがります。この手品のような表示まで来ると、生徒から「オ~!」という歓声が上がります。 

  

筆者は約20年前から上記の説明を行っています。そして、その時に使うカードを「do と does はどこから来た?」セットとして袋に入れ、長年愛用しています。中学校の先生ならぜひやってみると面白いと思いますし、高校の先生が「改めて聞くけど、do や does はどこから来たんだろうね?」と生徒に投げかけてみるのも面白いかもしれません。簡単なことなのに教科書や参考書には書かれていない、塾の先生も教えてくれない…。そんなことを授業で教師と生徒が一緒に考えて答えを導き出していく。上手に生徒を乗せられれば、授業の後に爽快感を得られます。