「形容詞の最上級には the が付く」ではない!

タイトルを読んで、「おい、おい。そんなことを言ったら、中学校の教科書に書かれていたことはまちがいだったのか?」「あんた、偉そうに言っているけど、何の資格があって文部科学省の検定教科書に逆らうようなことを言っているんだ?」と思った人もいるかもしませんね。そういう方は、「27. なぜ副詞の最上級には the が付かないの?」「28. 形容詞の最上級でも the が付かない場合があるの?」をお読みになってからこちらにお戻りください。きっとタイトルの意味するところを感じ取っていただけると思います。

 

では、上記の2つをお読みなった方も含めて、今回のタイトルの意味するところを確認してみましょう。

 

「27. 副詞の…」では、副詞の最上級に the が付かないのは、それが修飾する普通名詞がないからだということをお話ししました。次に、「28. 形容詞の…」では、The lake is deepest at this point. のように形容詞(ここでは deep)を叙述用法で最上級として使う場合はそれによって修飾される普通名詞がその後ろにないので the は付かないということをお話ししました。

 

これら2つの話に共通することは何でしょうか?

 

そうです。いずれの場合も、the が付く対象となる普通名詞がないということです。この点と、「7. これを読めば the の使い方がわかる①:基本理解編」でお話しした the が付く条件を合わせて考えてみれば、タイトルの意味するところがわかるでしょう。

 

【思考時間】

 

では、上記の点についてまとめてみると、the はその後に出てくる普通名詞にかかっているのであって、形容詞の最上級にかかっているのではないということが言えます。もちろん、形容詞の最上級によって「話者の間で共通理解が得られている」という状況が与えられるからということはあります。しかし、だからと言って、the は形容詞の最上級に付いているのではありません。あくまでもその後ろにある普通名詞に付いているのです。

 

例えば、the fastest runner であれば、名詞(runner)を修飾する語の順番が「冠詞」(the)→「形容詞」(fastest)なので、the が形容詞の前にあって形容詞に付いているように見えているだけなのです。

 

ということで、タイトルの意味するところをご理解いただけたでしょうか。形容詞の最上級の前に the があるのは、それによって後ろにある普通名詞が限定された状態になるからであって、形容詞の最上級そのものに the が付いているのではないという話でした。

 

今回で最上級と the に関する話は完結となります。この度の3回連続の話で、the に対する理解がより深まったと感じていただければ嬉しく思います。なお、the の基本的な使い方についてより明確に知りたい方は、本コーナーの「これを読めば the の使い方がわかる」シリーズ(①~④の4回)をお読みになってみてください。

 

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