in, on, at は前置詞(preposition)の代表的なもので、場所や時間を表すものとして繰り返し教科書に出てきますが、意外にその使い分けは難しいと思われています。例えば、場所を表す前置詞句を作る際に、これらの3つのどれを使ったらいいか迷うというものです。しかし、今回の説明を読んでいただければ、少なくともこの3つの使い分けは簡単なものだということがわかるでしょう。
できれば、「4. 前置詞onは「~の上に」ではない」を読んでからこちらを読んでいただきたいのですが、そうでない方のために、そちらのページの結論を先にここで示しておきます。
「前置詞を正しく使うには、それぞれの語がもつ『本来の意味』を知り、その意味を伝えられる前置詞を選ぶ」
つまり、このページでの結論も、「in, on, at が持つ本来の意味を知り、自分が伝えたい意味を最もよく表しているものを選ぶ」ということになります。
今回は、次のような問いから始めます。その理由は最後にわかります。
(問)次の( )に適切な前置詞を入れなさい。
I arrived ( ) Tokyo yesterday. 私は昨日東京に着きました。
中学校3年生以上の方なら、おそらく答えは in か at のどちらかだと思うでしょう。それは、教科書に「~に到着する」という連語として arrive in か arrive at のどちらかが登場しているからです。ところが、後で2つの答えがあると分かった時に、「いったい、in と at のどちらを使えばいいのだろう?」という疑問(迷い)が出てきます。その迷いも、最後まで読んでいただければ解決できます。
では、話を戻して基本的なことを確認しましょう。先述のとおり、in, on, at は場所や時間を表すものとして使われます。
<場所の場合>
・in the box
・on the desk
・at the table
<時間の場合>
・in January
・on Monday
・at 7 o'clock
話を簡単にするために、最初に時間を表す場合の前置詞の使い方を見てみましょう。
各前置詞の後ろにある時間を表す名詞を見てみると、その時間の長さに次のような不等式が成り立つのがわかります。
January > Monday > 7 o'clock
ここからわかることは、時間を表す前置詞のイメージとして、次のような感覚があることです。
in > on > at
次に、3つの前置詞がそれぞれどのような意味を相手に伝えるのか、つまりその前置詞を使うと、相手がどのようなイメージを持つのかを見てみます。
・in…月、週のように長い期間を表す
→その中にどっぷりつかっているイメージ
・on…日のように短いがある程度の長さのある時間を表す
→そこにピタッと接しているイメージ
・at…時刻のように時間の中のある1点を表す
→ある1点に乗っているイメージ
つまり、英語話者は次に来る時間を表す単語が持つ時間の長さのイメージによって、前置詞を使いわけているのです。
上記のような各前置詞が表すイメージを不等号を使って説明すると、曜日より短い「午前」が in the morning だったり、「曜日」と「午前」を合わせたものが on the morning of Monday だったり、午前や午後と同じような時間の長さの「夜」が at night だったりするのはどうしてかという疑問が出てくるでしょう。
これも、前置詞の後ろにあるそれぞれの時間を表す表現のイメージが、それぞれの前置詞に合ったものになっているからです。つまり…
・in the morning…午前という時間の中にいるイメージ
・on the morning of Monday…月曜日の午前をやや客観的に見て、短い時間帯にしているイメージ
・at night…夜を一瞬で過ぎるものにしているイメージ
at night は補足が必要でしょう。これは、かつて夜は日が沈んでから日が昇るまで寝ていて一瞬で過ぎるものというイメージが残っているためのようです。ちなみに、「夜通し踊る」のように夜を長いものととらえている場合は dance in the night と言います。
では、次に場所を表す場合について考えて見ます。
実は、これも時間の場合と同じなのです。つまり、
「in > on > atが成り立つ、その場所の広さのイメージを表す」
具体的には、最初にあげた例で見てみれば、
・in the box…箱の中にどっぷりつかっているイメージ
・on the desk…机(の上)に接しているイメージ
・at the table…テーブルを点と見ているイメージ
時間と場所に共通するイメージ、つまり「本来の意味」をまとめてみます。
・in…どっぷりつかっている
・on…接している
・at…点として見ている
結論として、in, on, at を正しく使い分けるには、その後ろにくる名詞で上記のどのイメージを相手に伝えようとしているかを判断すればいいということになります。
そこで、最初に出した問いに戻りましょう。
I arrived ( ) Tokyo last Sunday.
には、in と at のどちらを入れたらいいでしょうか?
正解に移る前に直前の結論をもう一度読んでください。
そうです。どちらでもいいのです。ただし、どちらを入れるかで相手に伝えるイメージが変わります。つまり、発言者が Tokyo をどうイメージしているかによるということです。
・in Tokyo…東京にどっぷりつかっている
→おそらく発言時も東京にいるのでしょう。
・at Tokyo…東京を点として見ている
→もはや東京から離れ、地図でも見ているのでしょう。
いかがだったでしょうか。「4. 前置詞onは…」に続いて、今回も「in, on, at の持つ『本来の意味』を知り、自分が伝えたい意味を最もよく表しているものを選ぶ」という結論を理解していただけたと思います。(11/16/2018)
前置詞の正しい使い方を教えるには、いろいろな方法があり、上記のような説明もその1つです。ただし、上記のようなやり方でも、説明をすれば生徒にわかってもらえるかというと、そうは簡単にはいきません。なぜなら、今回の説明は紙幅の関係で筆者が行っている指導のエッセンスだけを抜き出しただけだからです。つまり、生徒の発言や顔色を見ながらの指導過程が抜けています。
実際に指導する場合は、それぞれのステップのところで、できるだけ多くの例文を示して、各前置詞が表す「本来の意味」を生徒がイメージできるようにしてあげてください。そして、各ステップを生徒が理解できたことを確認してから次のステップに移るようにします。ですから、実際には今回の指導を授業で行うには、それなりの長さの時間が必要です。しかし、だからと言って、そればかりに時間をかけていると生徒が飽きてきます(過去の経験による反省)。したがって、ステップ毎に指導内容の「固まり」を設け、それを複数回に分けて扱うことで、最終的な結論まで行くという方法をお勧めします。