start と begin を上手に使い分ける

start と begin は、いずれも「~が始まる」(自動詞)、「~を始める」(他動詞)という日本語訳が与えられているので、生徒から「ちがいは何ですか?」とよく質問されます。教科書の例文を見ても、どちらを使っても良さそうに見えるので、そのような質問が出てくるのでしょう。ALTに尋ねても、一瞬の沈黙の後に "No difference." と言われることもあるので、それだけ微妙なちがいのものであると言えなくもないのですが、場合によっては明らかに「~の方を使う」ということもあるので、今回はそのような場合を説明することにします。

 

1.使われる場面のちがいから

一般的に、「begin の方がフォーマルな印象を与え、start の方がカジュアルな印象を与える」と言われます。つまり、「が始まる」「~を始める」ということを丁寧に言いたいときは begin を使う方がいいということになります。「丁寧な…」場面とは、やはりビジネスシーンなどが考えられます。

 

例えば、「会議を始めよう」という場合は…

・Let's begin the meeting.

と言うことの方が好まれるわけです。もちろん、このような場面で start を使ってもまちがいではありません。ネイティブに聞くと、おそらく No difference. と答えるのではないかと思います。「丁寧な」かどうかにとてもこだわる日本人からすると、No difference. と言われてしまうのはどうかと思うのですが、ネイティブはどちらを使うかで相手に与える印象を瞬時にコントロールしています。

 

2.意味の許容範囲のちがいから

こちらの方がもう少し明らかなちがいを説明できます。「~が始まる」や「~を始める」ということばには、よくよく分析するといろいろな意味のちがいがあることがわかるので、その点を見ていきましょう。簡単に言うと、次のようなちがいです。

 

begin物事が始まる/物事を始める場面に用いる。

 →「始まる/始める」、「取りかかる」、など、物事の開始を言う場合。

・When will our work begin?

・I began the piano lesson ten years ago.

 

start…上記に加え、止まっているものが動き出す場面に用いる

 →「動き始める」、「新たに始める」、など、動きの開始を言う場合

・The game will start at 7:00 p.m.

・Let's start a new lesson.

 

以上のことから、start の方が使用範囲が広いようにも感じられますが、一方で例えば「機械を動かし始める」のような場合は start しか使えないということがわかります。

・Will you start the engine?

これを begin を使って表すということはありません。

 

3.対語のちがいから

上記のちがいを考えると、「~が終わる」「~を終える」という対語にもちがいがありそうです。

考えられる動詞としては、end, stop, finish があります。それらを begin と start に組み合わせてみると、次のような組み合わせが成り立ちます。

 

・begin ⇔ end

・start ⇔ stop

 

なお、finish は「やり終える」という意味があるので、単に「終わる」「止まる」というより「労力をかけて終える」というニュアンスが加わります。「終了する」というよりは「完了する」というイメージです。「宿題を終える」という表現に finish が使われるのもそのためです。

・Have you finished your homework yet?

 

いかがだったでしょうか?

説明を読んで納得しても、いざ自分で使うときになると「どっちだっけ?」と思うことはあるでしょう。大切なのは、「両者にはちがいがある」ということを常に念頭に置いておくということです。たくさんの例文に出会う中で、自分でそれを使っていく中で、徐々に身に付けていきましょう。

 

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