can と be able to を上手に使い分ける

0. イントロダクション

I went to Australia last summer.  I was very happy because I could visit the Opera House.

 

生徒のスピーチに度々登場するこのような文は、一見するととても上手な英文のように見えます。おそらく、書いた本人は2つ目の文の後半部分で、「オペラハウスを見ることができたから」ということを言いたかったのでしょう。これは日本語としてはごく普通の表現であり、それをそのまま上手に(?)英語に直訳することができたので、本人はスピーチの出だしとして自信を持って話したと思います。

 

ところが、実はある単語の使い方が不適切なので、話した人が意図したような意味を伝えられていない可能性があります。それはどの部分かと言うと、タイトルから想像できると思いますが、2つ目の文の could という単語です。「訪れることができた」を英訳して could visit としたわけですが、ことはそう簡単にはいきません。

 

could は can の過去形ですから、「~できた」は「~できる」という意味の can をそのまま過去形にして使えばいいと思われがちですが、ここに私たち日本人が注意しなければならない落とし穴があります。一方、「~できる」という意味の他の表現として be able to という連語がありますが、日本語では同じ「~できる」という意味でも、それぞれの語句の持つ意味は少しことなるので、必ずしも2つの表現が交換可であるわけではありません。そこで、両者の正しい意味を確認し、それぞれの正しい使い方をマスターしましょう。今回は少々長くなりますが、最後までお付き合いください。

 

1. can と be able to の使い方の基本

この2つの表現の使い方をマスターするには、まず可能性として次の3つの場合があることを理解してください。

・can と be able to の両方が使える場合

・can を使うことが多い場合

・be able to を使うことが多い場合

では、それぞれについて例文を見ながら確認していきましょう。なお、例文のいくつかは中学生が使うのに適当な『アルファファイバリット英和辞典』(東京書籍)と『プラクティカルジーニアス英和辞典』(大修館書店)から拝借しました。

 

(1) can と be able to の両方が使える場合

現在形で「~できる」と言う場合の多くは、can でも be able to でも使えます。

・I can swim 100 meters within one minute.(100mを1分以内で泳げる)

・She is able to speak German fluently.(ドイツ語を流ちょうに話せる)

ただし、会話ではほとんどの場合 can が用いられています。 

 

(2) can を使うことが多い場合 

これは大きく次の2つの場合があげられます。

① 主語が物や事の場合

・This hotel can accommodate two hundred guests.(200人を収容できる)

② 受動態の場合

・Cellphones cannot be used in this area.(使えない)

 

(3) be able to を使うことが多い場合

これは簡単に言うと、助動詞を使えない場合です。つまり、直前にそれを不可能にする単語が存在する文の場合です。以下の3つの場合があります。

① 他の助動詞と一緒に使う場合

・You will be able to understand the movie when you grow up.(理解できるだろう)

・You must be able to swim 100 meters by tomorrow.(泳げるようになっていなければならない)

② 不定詞の to の後ろで使う場合

・I want to be able to play the piano like my sister.(弾けるようになりたい)

・You don't need to be able to speak perfect English.(話せるようになる必要はない)

③ 現在完了で使う場合

・I haven't been able to solve the problem.(まだ解決できていない)

・I have been so busy lately that I haven't been able to travel.(旅行できていない)

 

2. 考慮すべき過去形の場合

さて、ここからは「0. イントロダクション」でも取り上げた、生徒がよくミスする過去形の場合の could と was able to の使い分けについて述べることにします。

 

(1) could を使う場合

大きくは次の2つのような場合があります。

① 過去の継続した能力や可能性として「~できた」と言う場合

・My grandfather could speak five languages.(話せた)

・We couldn't win the game.(勝てなかった) 

 ※「勝つ能力が無かった」ということ。

② 「見る」「聞こえる」などの知覚動詞と一緒に使う場合

・I could hear your voice from here.(聞こえていた)

・I could see it in the distance.(見えていた)

 ※ある一定期間「聞こえていた」「見えていた」という場合に使い、一度だけ「聞こえた」「見えた」というだけなら、heard, saw のように動詞の過去形で表します。

 

(2) was able to を使う場合

「~できた」と過去の1回かぎりのことを表す場合はこちらを使います。can は使いません。

・I was able to sleep well last night.(よく眠れた)

・I was able to understand that.(理解できた)

 

(3) どちらの場合にも使える couldn't

過去の1回かぎりのできごとでも、「~できなかった」と否定形で使う場合は couldn't が使えます。

・I couldn't agree with you.(同意できなかった)

・I couldn't swim very well.(泳げなかった)

 

さて、以上のことを総合すると、「0. イントロダクション」の文の後半は「オペラハウスを見る能力があったから」という意味になり、ここで言おうとしていることとはちがう意味を伝えてしまうことになるのがおわかりでしょう。もし「オペラハウスを見ることができたから」と言いたいのであれば、… because I was able to visit the Opera House. とするか、単に … because I visited the Opera House. としたり、... to visit the Opera House. とto不定詞の文にするのがいいでしょう。

 

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