historic と historical の使い分け

「歴史上の~」とか「歴史的な~」と言いたいときに、history という名詞から派生した historic と historical のという2つの形容詞を思い浮かべます。ところが、どちらを使ったらいいかということに迷うという人も多いのではないでしょうか。今回は、この2つの形容詞の持つ意味をきちんと理解し、正しく使い分けられるようになることを目標とします。また、「結局どっちだっけ?」となったときに判断できる簡単な方法も提供したいと思います。

 

1. historic と historical の意味のちがい

まず、辞書等でこの2語の意味を調べてみると、次のような意味が与えられています。

 

・historic…歴史上の、歴史上重要(有名)な、歴史をたどれる、…

・historical…歴史の、歴史的な、史実に基づく、歴史上に実在する、…

 

「う~ん、これだけだとよくわからないなあ…」というのが正直なところでしょうか。そこで、両者が使われている語句で見てみましょう。

 

○historic

・historic place[site] 史跡

・historic document 歴史的文書

・historic event 歴史的事件

○historical

・historical science 歴史学

・historical play[drama] 史劇

・historical studies 歴史研究

 

これを見ても正直「う~ん…」という人もいるかもしれませんね。そこで、上記からわかることをまとめてみると、次のように言えます。

 

・historic は「歴史上実際にあった~」

・historical は「歴史に関する~」

 

つまり、historic にあげられている3つは、「歴史上実際にあった場所」「歴史上実際にあった文書」「歴史上実際にあった事件」ということになります。いずれも実物、写真、文書などでそれが以前に起こった(今も存在している)ことに対して使われます。

 

一方、historical にあげられている3つは「歴史に関する科学」、「歴史に関する劇」、「歴史に関する研究」ということになります。例えば、historical play は歴史に関する劇であって、歴史そのものを再現しているわけではないということです。

 

ただ、実際にはネイティブ・スピーカーでもこの2つを混同して使っている人も多く、さらにより高度な使用例でもどちらも使える表現があるので、両者に完全な線を引くのは難しいという研究者もいます。特に、historical が「歴史上の」という意味で使われることもあるので(例:historical fact 歴史上の事実)、historical の方が守備範囲が広い、つまり「歴史」ということに関する形容詞として広く使われているとも言えそうです。 

 

2.「結局どっちだっけ?」のときの判断の仕方

上記のことは、辞書やネットで調べてもほぼ同様の説明がなされています(筆者の記事がそれらを参考にしているのですから当たり前ですが…)。みなさんも読んでいただければほぼ納得していただけたでしょう。ところが、今はわかっていても、いざ自分が使おうと思ったときに“切れの良い”判断ができるかどうかは難しいところです。「結局どっちだっけ?」となるかもしれません。そこで、そうなったときのヒントを筆者が取っている方法でご紹介しましょう。

 

その1つの方法は、両方の意味を正確に覚えるのではなく、一方だけを覚えておくという方法です。一方が正しく覚えられていれば、もう一方は推測で判断できるからです。では、その一方をこの2つの単語で見てみると、historical の方がその候補に上がります。それは -al という接尾辞を持った形容詞がたくさんあるからです。例えば…、

 

・national 国家の、国家的な

・medical 医学の、医学的な 

・social 社会の、社会的な 

・musical 音楽の、音楽的な

 

そうです。これらはみな「~的な」、つまり「~に関する」という意味を持っています。ですから、historical という単語だけを historic との対比で覚えておくのではなく、語尾が -al となっている他の形容詞を思い浮かべるようにします。こうすれば、もう一方の historic は別の使い方、この場合は「歴史上実際にあった」という意味の方で使うのだということを推測することができます。

 

「1.…」の最後に「両者に完全な線を引くのは難しい」と書きましたが、たとえそうであったとしても、基本的な使い分けはできるようになりたいですね。

 

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