<SVO to/for O>の文と<SVOO>の文のちがい

【質問】

My father gave a present to me. と My father gave me a present. はどちらも同じ意味の同じ文ですか?

 

【回答】

今回の質問も生徒からよくされるものです。中学校では大抵前者の文を先に習い、次に後者の文を習います。それは、前者の文が<SVO>、つまり「主語+動詞+目的語」という比較的単純な構造の文であるのに対して、後者は<SVOO>、つまり「主語+動詞+目的語(人)+目的語(物)」という少し複雑な構造の文だからです。

 

ところが、上記の2つの文を入れ替えさせる、以下のような問題が問題集などに載っていることがあるので、2つは「同じ文」だと思っている人も多いでしょう。

 

<問>次の2つの文が同じ意味になるように空所に適語を入れなさい。

① My father gave a present to me.

② My father gave (  me  )(   a   )(present).

 

しかし、同じような意味の文であるように見えても表現の方法が異なれば(特に文型が異なっている場合は)、ニュアンスが異なっていたりまったくちがう意味になっていたりして当然なのです。すなわち、上記の2つの文も伝えようとしている内容が異なります。

 

この2つのタイプの文のちがいについて説明する前に、英文の作りにはある大切なルールがあることから始めたいと思います。それは…

 

大切な情報ほど文の後ろに置くということです。これを「エンド・フォーカス(end focus)」と呼びます。

 

このように言うと、「えっ?英語って日本語とちがってまず結論を先に言う言語だと習ったけど…?」と言う人もいるかもしれません。しかし、複数の情報がある場合は、大切な方を後ろに持ってくるのも英語の特徴です(いや、他の言語にも共通することかもしれません)。それは、結論を先に言うことも大切ですが、そうしてしまうとその文を最後まで集中して聞かなくなってしまうこともあるからです。そのため、大切な情報は最後までとっておきます。逆に言えば、複数の情報がある場合は後ろにある情報ほど重要なものであるということです。

 

少し異なった視点からわかりやすい例を出しましょう。例えば、英語でも「オチ」のある話(冗談など)の場合、その面白い部分は最後の語句であることがほとんどです。途中で笑ってしまうのではなく、最後の一言でみんなを笑わせたいからです。このあたりは日本語(というか日本人の文化)にも共通することで、落語のオチなどにもそれが表れています。

 

さて、この原則に立って件の2つのタイプの英文について確認してみましょう。教科書本文を使って見てみます。

 

① My father gave a present to me.

② My father gave me a present.

 

①、②ともに「与える(もらう)」対象として「私に」「プレゼントを」という2つの情報があります。すでに述べたことから、2つの情報のうちの後者が重要な情報となります。つまり、①の文では to me が、②の文では a  present が重要な情報なのです。

 

したがって、①の文の伝えたい情報の重要度は to me > a present であり、②のそれは a present > to me ということになります。すなわち、①は「私にくれたのよ」ということを、②は「プレゼントをくれたのよ」ということを強く言いたいのです。

 

令和3年度版の中学校英語検定教科書『One World』2年生には、同じページに次のような2つのタイプの文が出ています(色分けは筆者による)。

 

③ A blind person can send messages to the guide dog through it. (p.10, l.5)

 ※ it = a harness(ハーネス、装具)

④ Can the guide dog also send its owner messages?  (p.10, l.7)

 

上記の文はいずれも「(人/犬)に(物)を送る」という意味の文です。しかし、強調したい点にちがいがあることがわかるでしょう。そうです。①は「盲導犬に」伝えられるということが重要な情報です。一方、②は「メッセージを」伝えられるかということが重要な情報です。①には「犬にメッセージが伝わる」というという驚きがあるのであり、②には「犬がメッセージを送ることができる」という驚きがあるのです。この2文はこのちがいを的確に使い分けています。

 

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