否定疑問文の意味と答え方

【質問】

4月号の24ページの Doesn't it look lovely? という文は、Doesn't という否定形で始まっていますが、直訳すると「美しくありませんか?」という意味なのでしょうか。また、どういうときに使いますか?

 

【回答】

「疑問文なのに否定形の語で始まるの?」と思った人も多いことでしょう。実は、Yes./No. で答える疑問文には次のような2種類があるのです。

 

① Do you like me?

② Don't you like me?

 

①も②も相手に「私を好きか?」をたずねる質問です。しかし、この2つは少しちがった意味で使われます。では、いったいどうちがうのでしょう?

 

まず、①は相手が Yes./No. のどちらで答えるかまったくわからない状況で、たずねる方にも特にどちらの答えを期待しているという意志を含まない場合に用いられます。つまり、最も公平な立場で質問する一般的な質問方法と言えます。一方、②はたずねる側が相手にYes.と答えてもらいたいという期待感を含んだ質問形式です。日本語に直訳してみればわかりますが、「あなたは私を好きではないんですか?」という質問には、言外に「好きでしょう?」という相手へのメッセージが入っています。つまり、日本語でも英語でも、否定形で始まる疑問文は相手に肯定的な答えを期待する質問として用いられるのです。このちがいはご質問のあった箇所の日本語訳が「美しいでしょう?」となっていることからもわかります。ここを直訳風に「美しく見えないですか?」などとしたら、場面にふさわしい意味を伝えにくくなることに加えて、日本語として不自然な印象を与えてしまうでしょう。

 

なお、これらの質問に答える際は注意が必要です。日本語の場合は相手の質問に同意する場合は「はい」、同意しない場合は「いいえ」と答えますが、英語の場合は相手の質問の仕方に関係なく、肯定の答え(ここでは「好き」)であれば "Yes"、否定の答え(ここでは「好きではない」)であれば "No" と答えます。

 

これをまちがえると大変なことになる場合があります。例えば、あまり良い例えではありませんが、殺人現場に出くわしてしまったとしましょう。その時に、現場検証に来た警察官に次のように言われたとします。

 

You didn't kill him, did you?

 

警察官はあなたを疑っているわけではなく、単に確認しただけです。形は付加疑問文になっているので、正確には否定疑問文ではないのですが、おそらく上記のように尋ねられたら、「『お前が殺したんじゃないよな?』って聞かれたんだよな」と頭の中で考えますよね。そこで、「そのとおりです」と答えようと思って、そのまま "Yes." と言ってしまったら、どうなるでしょう?

 

そうです。この "Yes." は "Yes, I did." つまり、"Yes, I killed him." ということを表しますから、あなたは逮捕されてしまうでしょう。ここは "No." つまり No, I didn't. と答えなければならない場面です。日本語で考えたことをそのまま英語にするのではなく、英語の発想で答えてください。

 

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