なぜ stop や finish の後ろに不定詞の名詞的用法を使えないの?

新シリーズ「なぜ~なの?」の第1弾です。実は、同様の疑問に答えるページはすでに文法に関するページでは「1. なぜ be動詞の疑問文は be動詞を文頭に出すのか?」、発音とつづり関するページでは「2.‥」~「7.‥」までの6ページにわたってアップ済みです。その後に他の事柄を書いているうちに、まだまだ他にも「なぜ‥?」という疑問に答える事柄が残っていたことに気づいたので、改めてここでいくつか取り上げることにしたというわけです。

 

0. イントロダクション

今回話題にしたいことは、高校受験用の文法関係の留意点としては定番となっていることです。その定番事項は、動名詞と不定詞の名詞的用法を学習したところで、参考書や問題集に動詞の目的語として使う場合の動名詞と不定詞の名詞的用法の留意点が追加で記されています。授業でも塾でもおそらく決まり切ったこととして先生が強調するでしょう。その留意点とは、「stop や finish の後ろには動名詞は使えても不定詞の名詞的用法は使えない」というものです。

 

おそらく読者のみなさんのほとんどが、「そんなことは知っているよ」と言うでしょう。それほど基本中の基本に分類される留意事項だというわけですね。では、「なぜ stop や finish の後ろに不定詞の名詞的用法を使えないのか?」という質問にみなさんは即答できるでしょうか? 基本中の基本の留意点でありなが、実はその理由をしっかりと説明できる人はそれほど多くないと思います。今回はその答えを明らかにしていきます。「まあ、そういうものだと思って覚えておけば良い」でもいいのですが、せっかくですから、論理的に考えて解決しましょう。

 

なお、本ページをお読みになる前に、「14. to play と playing は交換してはいけない」を改めてお読みになることをお勧めします。それを読んでいただくと、もしかしたら本ページの結論をある程度予想しながら読んでいただけるかもしれません。

 

1. 不定詞の名詞的用法と動名詞のちがい

14. to play と playing は交換してはいけない」でも述べましたが、動詞の目的語として「~すること」という意味で使われる不定詞の名詞的用法と動名詞には次のような意味のちがいがあります。

 

・「これからすること」は不定詞の名詞的用法で表す。

・「これまでしてきたこと」は動名詞で表す。

 

そして、このちがいが次のような組み合わせの意味のちがいに表れています。

① Nice to meet you.

  Nice meeting you.

② I forgot to bring my textbook.

  I forgot bringing my textbook.

③ I started to play the piano ten years ago.

  I started playing the piano ten years ago.

④ Ken likes to play tennis.

  Ken likes playing tennis.

なお、それそれの意味のちがいは同ページで確認してください。

 

この意味のちがいが、今回話題にしていることの結論に関係しているのです。 

 

2. 主動詞の表す意味に着目する

さて、上記の②~④の主動詞 forget, start, like の文では、意味が少し異なるものの、目的語に不定詞の名詞的用法も動名詞も使うことができます。ところが、stop や finish では不定詞の名詞的用法は使えないというのが不思議なところです。

 

なぜこの2つの動詞では不定詞の名詞的用法が使えないのかというと、それはこの2つの動詞が表す意味に由来します。すなわち、stop は「止める、やめる」、finish は「終える」という意味があるという点が問題なのです。

 

「えっ?それはどういうこと?」と思った人は、不定詞の名詞的用法で表せる内容を確認してください。

そうです。「これからすること」を表します。stop も finish も「やめる」という意味がありますから、「これからすること」、つまり「まだやっていないこと」をやめるということはできないのです。だから、「これまでやってきたこと」を表す動名詞は使えても、「これからすること」を表す不定詞の名詞的用法は使えないのです。

 

3. 新たな疑問について考える

これまで今回話題にしたことを考えたこともなかったという人には、「目から鱗が落ちる」思いをしていただけたと思います。

 

ところが、文法関係の留意点に詳しい人は、ここで次のような疑問を持ったかもしれません。

 

「確かに、stop や finish ではそうかもしれない。でも、enjoy も確か同じ仲間だったはずだ。enjoy は『~を楽しむ』なんだから、これから起こることに対しても使えるのではないか? enjoy については今回の話では納得できない。」

 

かく言う筆者も同様の疑問を持った一人でした。しかし、enjoy も stop や finish と同じ扱いの動詞であるとするならば、enjoy が表す意味にも「これからすること」を使わせないものがあるのではないかと考えるべきではないでしょうか。

 

日本語では、「~を楽しむ」という意味から、これからやることにも使えそうな感じがします。なぜかと言うと、「私は明日映画を見て楽しもうと思います。」という表現はまったく自然ですし、その表す内容もスッと納得できるからです。しかし、enjoy は楽しむ対象となることがらを経験した後の気持ちを指して言うものであるらしいのです。

 

  I enjoyed watching the movie.

 

つまり、「楽しかった」と感じる対象を初めからその時点まで経験してきたことを enjoy で表すのです。すなわち、そこまで経験してきて初めて「楽しかった」と感じたことを表すということになります。

 

また、未来のことであっでも終わりまで経験したことを想定した内容を表す時に使うものであると考えればいいのではないでしょうか。つまり、以下の文では読み終えた後の気持ちを指しているのです。

 

  I will enjoy reading books for the rest of my life.

 

4. まとめ

いかがでしたでしょうか。「まあ、そういうものだと覚えておけばいい。」ということの中にも、その理由をきちんと論理的に説明できるものがあるのだということを改めて感じていただけたと思います。

 

今後も不定期に「なぜ~なの?」の疑問に答えるページをアップしていきたいと思います。

 

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