I'd rather not say.「私はむしろ言わない」?

筆者の学校では少なくとも30年以上前から、生徒が仲間の前でスピーチを行う授業を行ってきています。しかも、ほとんどのスピーチで発表後にALTからの質問に答えるという活動があります。今回ご紹介する表現は、そのときに使いやすい表現としてALTがよく助言してくれるものです。そう言われてみてからは、筆者も映画やドラマを見ているときにこの表現がときどき使われていることに気づきました。そこで、今回はこの表現を取り上げます。

 

まずは、使われている単語について細かく見てみましょう。I'd rather not say.の I'd は I would の省略ですね。would は will の過去形ですが、過去形にすることで「~するつもり」という意味を少し婉曲的に表します。次に普段あまり見かけない rather という単語は、「むしろ」とか「どちらかといえば」という意味の副詞です。そうすると、I'd rather で「私はむしろ/どちらかと言えば~するつもり」という意味になります。ただ、場合によってはこのやや婉曲的な言い回しが積極的な意向を示すこともあるので、「喜んで~するつもりです」という意味を含むこともあります。そこに not が入るので、「喜んで~するつもりはない」、つまり「あまり~したくない」という意味になります。面白いのは、not が would の直後になく、間に rather がはさまっていることでしょうか。

 

したがって、I'd rather not say. は「私はあまり(答えを)言いたくない」という意味です。この表現をALTが勧めるのは、質問されたことに答えたくない場合に使うといいということからです。質問されて答えに窮する場合としては、質問の意味がわからない場合を除けば、たいていは「答えの内容が思い浮かばない」か「答えは思い浮かんだけれど表現がかわからない」の2つでしょう。しかし、3つめの場合として「答えは思い浮かんで表現もわかっているけど、答えたくない」ということもあると思います。そういうときにこの表現が良いというわけです。中2で(今では小学校で)習う表現として I don't want to say. というもう少し簡単な表現がありますが、それより丁寧な印象を与えるこちらの方が良いようです。

 

みなさんも、授業中に同じような場面に出くわしたりしたときには、使ってみると良いでしょう。ただし、本当に言いたくないのではなく、ただ単に答えを言うのが面倒だったり答えが思い浮かばなかったりしてこの表現を連発するのだけはやめた方がいいでしょう。せっかく丁寧な表現を使っているのに、連発することでかえって相手に失礼になるからです。

 

A: Which do you like better, A or B?

B: Well ..., ah ...,  I'd rather not say.

 

こんな感じで使ってみましょう。 

 

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