0. イントロダクション
みなさんは英語のテストの結果が返されたときにどうしていますか?
おそらく答えは大きく2つに分かれるでしょうね。1つは「何もしない」。もう1つは「見直しをする」。あなたはどちらでしょうか?
「何もしない」という人はおそらくこれを読んでいないでしょう。これを読んでいる人の多くは「見直しをする」タイプの人だと思います。
では、どんな見直しをしているでしょうか?
きっと多くの人が「まちがえたところをもう一度やる」ではないかと思います。
そのような復習は大変有効ですので、ぜひこれからもしっかりやってください。ただ、それだけではあなたの力を劇的に伸ばすことはできません。それはなぜなのか。そしてそれをどのように改善したらいいのかを今回はお話ししましょう。
1. よくある復習の例とその落とし穴
例えば、あなたが定期テストで80点を取ったとします。そのままにしてはいけないのは「10. 八掛け学習で満足していたら怖いことになる」で述べたとおりです(まだ読んでいない人はそちらも読んでください)。上記で「まちがえたところをもう一度やる」という答えをした人は、誤答であった20点分をしっかり振り返ることができる人ですね。ところが、それで満足していると、ある大きな落とし穴に陥っていることに気づかずに進んでいってしまうことになりかねません。
その落とし穴とは、80点分の正解の中にたまたま○になったものがなかったかということです。特に、記号問題や穴埋め問題などにそういうことがよく起こります。また、いわゆる「消去法」という方法で答えを導いた場合もそれにあたります。つまり、最初から自信を持って正解を書いたのではなく、なんとなく書いた、適当に書いた、迷った上に書いた、のに正解であった問いのことを言っています。
こういう問いに関しては、出題のねらいである文法事項や表現力において、そのことがらを理解できているとは言えないのです。なぜかと言えば、しばらくしてから同じ問題や同様の問題に出くわしたときに、もう一度正解を書けるかどうかわからないからです。つまり、「たまたま正解であった」問いの内容に関しては、その内容を本当に理解しているとは言えないということです。
2. 他の人に説明できて初めて「理解している」と言える
では、どのような状況であれば「本当に理解している」と言えるのかというと、タイトルにもあるとおり、他の人に正解を説明できるレベルにあるということです。具体的には、各問いの正解を導くまでの過程を自分のことばで説明できることを指します。
例えば、あなたが中学校1年生(あるいはそれ以上)であったとしたら、それぞれ次の問題の答えを導くためにどのような説明ができるでしょうか?
<問>次の空所に日本語の意味に合うように適語を入れなさい。
You and I ( ) friends. あなたと私は友達です。
これに対して、「主語が I だから答えは am である。」などという誤答を書いてしまうのは論外として、例え正解の are を書けたとしても、その説明がどこまでできるかで本当に理解しているかどうかがわかります。
(1) 分析になっていない説明例
① 主語が you and I だから答えは are である。
② 意味が「私とあなたは友達です。」だから、答えは are である。
①の文の説明は一見すると良さそうに見えますが、正解を示しているだけで、なぜ答えが are なのかということの分析が書かれていません。②の文は英文と和訳を示しているだけで、どこがどう関係してその答えが出てきたのかが書かれていません。つまり、もしあなたがこのような解説を書いて「理解している」と思っているのだとしたら、英語の文法をきちんと理解しているとは言えないのです。
(2) 分析にはなっているが足りない説明例
③ 主語がyou and I と複数になっているので、答えは are である。
③の説明は①や②に比べると進歩しています。なぜ are を入れるかの理由が書かれているからです。しかし、これだけでは不十分です。なぜなら、主語が複数だからと言って、直後にbe動詞が入るとはかぎらないからです。つまり、一般動詞ではなくbe動詞を入れること、そしてそもそもこの場所に動詞を入れるということを説明できなければいけません。
(3) ここまで説明できてほしい説明例
④ この文の中には動詞がないので、( )には動詞が入る。日本語を見ると、「~です」にあたるところがないので、一般動詞ではなくbe動詞が入る。主語が you and I と複数になっているので、そのbe動詞は are である。
ここまで自分のことばで説明できればよいでしょう。なぜなら、英語のテストで常に高得点をとる人は、④のような思考を瞬時に頭の中で行ってから正解を書いているからです。もちろん、④とまったく同じ思考過程とはかぎりません。しかし、以下の3点は必ず思考過程に入っているはずです。
・( )には動詞が入ること
・その動詞はbe動詞であること
・主語からそれは are であること
いかがだったでしょうか? ここまで説明できれば、本当にこの文法事項がわかっていると言えると思います。逆に言えば、①~③の程度の説明しかできない人は、まだ理解が不十分だと言えます。
3. 他人に説明してみる
筆者の学校では、中学校1年生から3年生まで全ての学年の全てのクラスで「テストノート」(定期考査の振り返りを行うための専用ノート)を作成させており、その中の作業の1つとして文法理解の問題と表現力の問題(筆者の学校では定期考査の問題はすべて評価観点別問題として7~8程度の大問に分けられています)の正答分析(正解への道筋を説明する作業)を行わせています。
そこで、これを読んでいるみなさんへのプレゼント(?)として、以下に筆者の学校のある年の1年生向けの定期考査の後に、筆者の生徒に正答分析をさせた実際のプリントとその模範解答を載せました。興味のある人は作業用プリントを印刷して(あるいは自分のノートに)答えを入れ、模範解答と見比べてみてください。目標は模範解答よりも詳しい説明ができることです。2年生や3年生の人もあなどるなかれ。1年生で習った文法事項や表現の問題をきちんと説明できるでしょうか?
1. 1年後期中間考査「文法理解」「表現力」の部門の正答分析(PDF)