授業中のノート取りは板書を写すことではない

0.イントロダクション

筆者は、かつてNHKラジオ『基礎英語2』の2012年4月号~2013年3月号のテキストにおいて、聴取者から寄せられた質問に答える「なるほど質問箱」というコーナーを担当していました(同名のコーナーを参照)。そこでは、放送された内容や日頃の勉強の仕方等に関する質問に現場教師としての立場から回答をしていました。そこで、ここではその中から日頃の勉強の仕方に関して回答したものを、本ページに合わせた内容に改訂して紹介することにします。

 

第1回は「ノートの作り方」です。ノートと言うと、授業中に使う「授業ノート」と家で勉強する時に使う「家庭学習ノート」があります。もちろん、両者を分けずに同じノートを使っている人も大勢いるでしょう。ここでは、授業中と家庭学習の2つの場面に分けて、ノート作りについて述べたいと思います。

 

1.授業ノートはどのようにとったらいいですか?

ノートの作り方の指導は授業を担当する先生によって千差万別ですので、基本的なノートの作り方はご自分の先生の指示に従ってください。ここでは、それをちょっとだけレベルアップさせるポイントをお話ししたいと思います。

 

ポイント1:先生が話した大切なポイントはできるだけメモをする

授業中に書くノートというと、先生が黒板に書いたことだけをそのままノートに書き写しておけばいいと思っている人がいますが、それだけは十分ではありません。授業の中には黒板には書かれない大切な情報がいっぱいあるので、それらをできるだけノートにメモしてください。例えば、先生が黒板に書かなくても「ぜひ覚えておきましょう」とか「大切ですよ」とか言ったことは必ずメモするようにします。こうすると、黒板には書かれなかったことまで後で振り返ることができます。また、先生が黒板に書いたこととそうでないことを見開きページの左右に分けて書くようにするとさらに確認しやすくなります。

 

ポイント2: 時間をかけずにきれいに書く

みなさんの中には、他人に見られることも意識してノートはできるだけきれいに作りたいという人もいるでしょう。しかし、授業中に色を何色も使ったりイラストを入れたりなど、あまりにもきれいに書くことに気をつかうのはお勧めしません。もし仕上げに気をつかっている間に、先生が何か大切なことを言ったのを聞き逃したり、活動が始まったのに気が付かなかったりしたら本末転倒だからです。授業中は必要なことを早く書くことを心がけるようにし、きれいに仕上げたい場合は後で復習を兼ねて行うようにしましょう。

 

2.家庭学習ノートはどのように作ったらいいですか?

これも基本的には授業担当の先生の指示にしたがってやりましょう。ここでは私が自分の生徒に指導している基本ポイントと私が過去に出会った生徒のユニークなノート作りの実践例を紹介します。

 

基本ポイント:「書き写す」のではなく「言えることを書く」ようにする

英語を書く練習をするときに大切なのは、言えるようになったことを書くということです。英語の1文字1文字を見ながら単語や文を「書き写す」作業をしているうちは力はつきません。それは、その時点ではまだその単語や文がその人にとって音や意味を伴わない「暗号」でしかないからです。そこで、書く練習をするときは、まずその単語や文を声に出して言い、それを言いながら書くようにしてください。つまり、頭の中にその単語や文を思い浮かべられるようになってから書くということです。こうすれば、英語を目と耳と手の3つを使って脳に焼き付けることができます。

 

<実践例1>「順番書き」ではなく「整頓書き」をする

単語や文を書く練習をするときに、ノートを最初からページを埋めていくように使っている人は多いのではないかと思います。しかし、数年前に少し異なった視点でノート作りをしている生徒に出会いました。その生徒は、教科書の1セクション(パート)を見開き1ページにあて、その見開きのスペースに日を変えて何度も同じことを練習していました。そして、練習した箇所のそれぞれに日付も書いていました。

 

この方法のすばらしい点は、同じページに同じ箇所が日付とともに書かれているので、何回目で(いつ頃)ミス無く書けるようになったかを自分で確認できることです。これを実践するには、教科書本文を暗記してから書く、日本語訳を見ながら書く、教科書CDを聞きながら書くなどの方法があります。

 

<実践例2>「授業再現ノート」…授業の内容を思い出しながらノートを作る

この生徒のユニークなところは、家でその日の授業で習ったことを復習するときに、先生の口調や仲間の発言までを思い出して、実際にそれを物まねしながらノートを作っていたことでした。それをやるためには先生や仲間の言ったことを聞き逃さないように集中力を高める必要がありますが、それだけでも授業中に吸収できることが増えるでしょう。

 

いかがだったでしょうか? ノート作りに悩んでいる人は、ぜひ参考にしてみてください。そうしてできたノートは、世界に1冊しかない、あなたのための最高の参考書になることでしょう。

 

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