後置修飾の理解が英語学習の最大のポイント(その1)

本ホームページを訪れるような中高の英語学習者にはあまり多くないと思いますが、中高年の学び直し組の方の中には過去に英語学習で苦労したという苦い思い出をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。今回は初学者及びそのような思い出のある方を念頭に置いた話をします。テーマは「後置修飾」です。

 

後置修飾が私たち日本人にとって難しいのは、日本語にはあまり見られない修飾方法だからです。日本語では、基本的に修飾語句は被修飾語(修飾される語)の前に来ます。例えば、「私は本を買いました。」で「本」がどのようなものであったかを説明するのに「私は昨日友人が私に紹介してくれた本を買いました。」と言います。太字の部分が「本」の修飾語句ですが、それはすべて「本」の前にあります。ところが、英語ではこの太字の部分は基本的にはすべて「本」の後ろに来ます。

 

I bought a book which a friend of mine (had) introduced to me yesterday.

 

つまり後置修飾となるわけです。この日本語と英語の感覚のちがいが日本人の英語学習に大きな影響を与えています。しかも、英作文なら少し考えてから作文すればなんとかなりますが、話しことばでは一瞬のうちに判断してことばにしなければなりませんから、大変なストレスになるわけです。

 

そこで、今回から4回にわたって後置修飾をマスターするための考え方と方法についてお話ししていきたいと思います。

 

1. 最初に出会う後置修飾

中学生を教えていて、生徒が一番最初につまずくのが前置詞(前置詞句)による後置修飾です。前置詞句が補語や追加語句として用いられている場合ならまだしも、それが名詞の後置修飾として使われると、とたんに理解に苦しみ始めます。まずは補語や追加語句として使われている場合を見てみましょう。

 

◇補語(青字の部分)として使われている場合

・I am from Tokyo.

・The cat is under the table.

 

◇追加語句(青字の部分)として使われている場合

・I play baseball with my friend in the park.

・This bus goes to the station.

 

上記に関しては、おそらくそれほど難しいとは思わなかったでしょう。ご自身で使う場合もそれほど苦なく出てくる表現だと思います。では、次に名詞の後置修飾として使われている場合を見てみます。

 

◇名詞の後置修飾(赤字の部分)として使われている場合

・Look at the cat in the box.

・The boy behind Tom is my brother.

 

いかがですか?「そうかなあ…。前置詞句の後置修飾だってそんなに難しいとは思わないけど…」と多くの方がおっしゃるかもしれません。しかし、中学校1年生に上記の英文をバラバラにしたものを並べ替えさせたり、英作文をさせたりすると、かなり高い確率で次のようなまちがった表現が出てきます。

 

・*Look at the box in the cat.

・*Tom behind the boy is my brother.

 

これはどうしてかと言うと、日本語の順番に単語を並べてしまうからです。つまり…

・「その箱→の中の→そのネコ」→"the box→in→ the cat"

・「トム→の後ろの→その少年」→"Tom→behind→the boy"

としてしまうのです。特に下の前置詞句が主語として使われている方は誤答率が高くなります。

 

筆者の授業では、かなり早い段階からこの前置詞句による後置修飾を徹底的に扱い、定期試験でも何度も何度も出題するので、段々と誤答は少なくなっていきますが、それでもなかなかこれを克服できていない生徒が少数ながらいるのは事実です。

 

これだけ大切な文法事項である前置詞句の後置修飾なのに、検定教科書では必ずしも明示的に文法事項としては扱われていません。その理由は、教科書の内容を左右する学習指導要領にその記述がないからです。実は、筆者が携わっている検定教科書の編集会議でも度々このことを話題にしており、令和3年度から使われる新しい教科書で取り上げるかどうかが議論されましたが、最終的には掲載が見送られました。その理由は、「学習指導要領に書かれていないことを載せる余裕はない」ということでした。

 

したがって、ご自身の努力でこの前置詞句による後置修飾を克服しなければなりません。まずは上記のような解説をしっかり理解することが大切ですが、理解したつもりでいても、どうしても日本語に引っ張られてミスをしてしまいがちです。そこで、問題集などで出会った前置詞の後置修飾を文字を見ずに何度も言うことをお勧めします。また、イラストなどがある問題などでは、被修飾語の名詞と修飾語の前置詞句の関係を意識して絵の内容を説明するような表現をつぶやくようにしてみてください。

 

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