umbrella のつづりは覚える必要はない

1. イントロダクション

少し刺激的なタイトルにしてみました。その方が読んでみようと思う人が多いだろうと持ったからです。

 

中学校では一般的に、umbrella という単語のつづりを書く(つまり覚える)のは、英語の初学者には難しいものであると考えられています。この単語は、「傘」という生徒の生活上でも身近にあるものを表すので、中学校1年生の語彙の学習にもよく登場します。しかし、ほとんどの先生はこの単語を「絵を見て発音できればよい」とし、読める、つづりを書ける、というところまではあまり求めません。

 

おそらくそれは、この単語のつづりが見た目に少し複雑で、ローマ字読みで「ウムブレッラ」と覚えなければならないからだと考えているからでしょう。しかし、本当にそうなのでしょうか? それが今回のテーマです。まあ、タイトルを見れば、結論はわかるのですが…(笑)。

 

筆者の勤務校では、この単語を入門期のつづりの問題としてよく出します。「それはあなたの学校が優秀な生徒ばかりいるからでしょう」という声も聞こえてきそうですが、けっしてそういうわけではありません。もちろん、いきなりこの単語を読ませたり書かせたりするようなことはしません。しかし、発音とつづりのことを勉強し、ある程度進んだところで、「発音どおりにつづりが書ける単語」としてこの単語が登場します。それはなぜなのでしょうか?

 

それは、この単語が「単純な『音』の連続+たった1つの『発音とつづりのルール』でできている」からなのです。つまり、つづりを見れば、この単語のことを知らなくても読める語だということです。それをここでみなさんにもお話ししましょう。ただ、すでに他のページで解説済みのことを重ねてここで説明するのは面倒なので、この後に説明することをスムーズに理解していただくために、すでにアップしてある以下のページをあらかじめお読みになってから、ここへお戻りください。

 

1. アルファベットの名前を読めても英語は読めない

2. make はなぜ「メイク」と読むのか?

6. sit の ing形はなぜ sitting なのか?

 

2. 解説

では、umbrella がなぜ「単純な音の連続」と「発音とつづりのルール」で読めて書けるかを説明します。上記の3つのページを読んだ方は、答えを想像しながら読んでください。

 

(1) 「単純な音の連続」で発音できる部分

アルファベットの文字の音で次の部分まで読めます。

・u ...「ア」

・um ...「アム」

・umb ...「アムブ」

・umbr ...「アムブル」

つまり、だんだんと増えていく文字の音を順番に足していけば、ここまでの発音はできます。逆に言えば、ここまでの発音を聞けば、ここまでのつづりがわかるということになります。

 

(2) 「発音とつづりのルール」で発音できる部分

後半の "ella" の部分は単純な音の連続では説明できません。それは、"e" の部分が「エ」と「イー」の2つの発音の可能性があるからです。つまり、"ella" が「ラ」と「イーラ」のどちらになるかということです。ここで発音とつづりのルールが必要になってきます。

 

ella はどう発音されるでしょう。それを考えるのに、ela がどう発音されるか考えてみます。すでに学習済みのルールに「<母音字+子音字+e >の場合、子音字の前の母音字は名前読みになる」というのがあります。つまり、make を「メイク」と読むという、「マジックe」の作用です。実は、この最後にある "e" の作用は他の母音にも当てはまることがあります。例えば、

・語末が "a" のもの→ data(デイタ。米では「ダータ」)つまり太字は「エイ」

・語末が "o" のもの→ depo(ディーポウ)つまり太字は「イー」

 

したがって、"ela" はそのままだと「イーラ」と発音されることになります。ここで”武器”が登場します。それは「子音字を2つ重ねる」です。こうすると、後ろにある母音字の影響がブロックされ、前にある母音字は「音読み」になります。sitting や apple でそうであったようにです。そこで改めて問題の部分を見てみると、"ella" は "ll" がブロック役になっているので、"e" の部分は「エ」(音読み)になります。そして、残りの部分は「ルルア」ですが、実際には「ルア」で、子音字と母音字の連続により「ラ」となります。すなわち、"ella" は「エラ」と読まれることになります。

 

(3) 両者の合体で単語の発音の完成

そして、前半部と後半部を連続させれば、「アンブル」+「エラ」=「アンブレラ」となるのです。つまり、umbrella はけっして「発音のルールどおりではない」単語ではなく、「発音のルールどおりの」単語なのです。そして、それは「つづりを見れば正しく発音できる」ということですし、「正しく発音すればつづりは書ける」ということでもあります。

 

3. まとめ

もちろん、以上のことを成り立たせるためには、その前提として、「各アルファベットを正しく発音できる」ということと「単語を正しく発音できる」ということがあります。したがって、発音とつづりのルールどおりにつづられている単語は、日頃から正しく発音できるようになっている必要があります。

 

勤務校では、入門期に徹底した発音指導を行っていますが、それは英語らしい発音を習得させるためであることに加えて、未知の語に出会ったときに正しい発音を類推できる力や発音された単語の正しいつづりを類推できる力を養うためでもあります。みなさんも、日頃からぜひ正しい発音(ここではいわゆる「標準米語発音」を指します)で単語を発音するようにしてください。そうすると、単語のつづりを覚えるのも楽になります。

 

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