そうなんですね。

以前、本コーナーの「36. お大事に、どうぞ~。」というページでこの表現はまちがっているということを述べました。今回はそこまでまちがっているというものではありませんが、初めて聞いたときに違和感があった表現を取り上げたいと思います。ただ、今回の表現は今では市民権を得ているものだと思います。

 

今から10年ほど前のある日、ある先生と一緒に仕事をしているときにその人には初耳であろう情報を教えてあげました。そうしたところ、中堅の女性教師であるその人が「そうなんですね」と言いました。「おい、おい。教えてあげたのに『そうなんですね』はないだろう。そこは『そうなんですか?』だろう」と思いました。ただ、それを口にはしませんでした。

 

その後も職場ではその女性の先生からのみその表現を何度か聞きました。違和感はずっとありましたが、一方ではその先生は島根県の出身なので、件の表現は島根辺りの方言なのかもしれないと思いました。それであれば、それは受け入れなければなりません。

 

ところが、その後に段々とテレビなどで若いタレントさんを中心にそのことばを使っているのをよく耳にするようになりました。そして、職場でもその先生以外にも使う人が増えてきました。そのようにして聞き慣れてみると、「そうなんですね」は「そうなんですか?」よりやや弱い驚きの表現として使われているのだということがわかってきました。

 

相手との軋轢をできるだけ避けるようにコミュニケーションしようとする最近の人が生み出した、というよりたどり着いた表現なのかもしれないと今では納得しています。自分では使ったことはないと思っていますが、もしかしたら自分でも無意識のうちに使っているかもしれません。なにせ、以前は若者に特有の平坦なイントネーションで話すことを嫌っていた筆者が、最近は同じように平坦なイントネーションで話すことが多くなっていると妻に指摘されていますから。

 

ことばは時代と共に移り変わっていくものだと言われます。特に、現在のように多くの人がインターネットで情報発信をするのが当たり前の時代では、ある人が使い始めた表現がいつのまにか多くの人に共有されるようになり、それが一般に定着するということはそれほど珍しいことではないかもしれません。件の表現もきっとそのようなことばの1つなのでしょう。

 

それとも、「その表現なら昔からあったよ」でしょうか。知らなかったのは筆者だけ?(6/3/2023)

 

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