have to は「ハフトゥ」ではない!?

タイトルを読んで、「えっ?やっぱり『ハトゥ』なの?」とか「『ハヴトゥ』と読むことがあることくらい知ってるよ」と思った人もいるでしょう。そうではないのです。この話を「文法に関すること」で取り上げていますから、ここでは発音に関することを問題にしているのではありません。

 

have to は、たいてい中学校2年生の教科書に初めて出てきます。それは次のような表現です。

 

I have to do my homework now.

 

そして、have to に「~しなければならない」という意味が与えられています。今回話題にしたいのは、教科書に上記のように示されていることです。

 

このように言っても、「それのどこがおかしいの?」と思った人もいるでしょう。実は、筆者も中学生の頃に教科書で初めて出会って以来、上記以外の示し方は見たことはありません。しかし、よくよく分析してみると、ちがった示し方ができるのではないかと思えてくるはずです。今回はそのような話です。

 

1. have to とは何か?

have to は must などと前後して教えられることが多く、かつ直後に動詞の原形があるので、助動詞あるいは助動詞と同じ働きのある連語だと思っている人が多いと思います。しかし、機能的には助動詞と同じであっても、否定文や疑問文の形を見れば、文法的には助動詞でないことは明らかですね。

 

I don't have to do my homework now.

Do you have to do your homework now?

I will have to do my homework tomorrow.

 

助動詞であれば、否定文は助動詞の直後に not が置かれ、疑問文はその助動詞が文頭に出されますが、have to の文の場合は don't have to ... あるいは Do ~ have to ...? となるので、助動詞ではありません。また、それは will have to などと他の助動詞と同居できることでもわかります。では何であるかと言えば、否定文では don't have の形になっていたり、疑問文では Do~ have の形になっていたり、助動詞 will の後ろに置かれていたりすることからわかるとおり、一般動詞 have の文であることがわかります。

 

では、残った to は何なのでしょうか? to が使われるのは、前置詞としてか、to不定詞かのどちらかですね。まさか前置詞ということはありませんし、後ろに do という動詞(この場合は「~をする」)がありますから、これは「to不定詞」と考えるのが順当でしょう。

 

2. なぜ have to は「~しなければならない」なのか?

ところで、1.のような議論の前に、そもそもこの一見するとそのようには見えない have to がなぜ「~しなければならない」という意味になるのでしょうか? 実は、その理由は 1. で先に示したことに関係しているのです。

 

1.の文の have to do の部分は、<have+ to不定詞>ということでした。この解釈からすると、to do の部分はどういう意味になるでしょうか?

 

そうですね。これを「不定詞の名詞的用法」だと考えれば、「~すること」という意味になります。つまり、have to do は「~することを持っている」という意味になります。

 

「~することを持っている」とは、「~するという状況を持っている」ということです。つまり、例文は「私は今宿題をするという状況を持っている」ということになり、そういう状況を持っているので、「~しなければならない」という意味になるわけです。

 

3. 要するに結論は何?

ここまで来たところで、タイトルが意味することは何なのでしょうか? まだ「何が言いたいのかわからない」という人のために、1.と2.の話を改めてまとめてみます。

 

最初に示した例文は、次のように示されていました。

 

I have to do my homework now.

 

しかし、1.、2.と話を進めていくうちに、次のように示す方が論理的だということがわかったと思います。

 

I have to do my homework now.

 

そうです。タイトルに「ハフトゥ」とあるように、まるで1語あるいは連語であるかのように示されているこの表現は、文法上は「ハフ+トゥ動詞」あるいは少なくとも「ハフ・トゥ」と示されるべきであるということを言いたかったのです。つまり、have と to はむしろ離すべきだということです。

 

もちろん、have to の部分を「~しなければならない」という意味の独立した表現かのように示した方が、中学校2年生には理解しやすいだろうという教科書会社の判断もわからないではありません。しかし、その後に参考書も含めてその示し方が継続されることで、<have+to動詞>で表そうとしている意味を論理的に理解できなくなってしまっているのが、残念でなりません。(1/20/2019)

 

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英語教師の方々へ

今回の話は、不定詞の名詞的用法が出てくる前にはできないことですが、それを学習した後であれば、「この部分がなぜ『~しなければならない』という意味になるんだろう?」と生徒に投げかけ、上記の説明のように生徒の頭を整理していってあげれば、生徒の頭の中を整理してあげることができると思います。

 

そして、今回の解釈をすることで、次回に予定している「12. シリーズ『交換してはいけない』①:must と have to」の核心となる点も説明することができるのです。