書き写すだけでは単語のつづりは覚えられない

もしあなたが中・高生であれば、テストで良い点数を取るために、新出単語を覚えたり、過去に学習した単語も忘れないように、一生懸命勉強していることでしょう。今回は、そのようなみなさんへのアドバイスです。

 

1. 単語を覚える段階

単語を覚えるには、大きく次の2つの段階があります。

 

① 伝えたい内容を表す単語自体を思い起こす。

② 思い起こした単語のつづりを正しく書く。

 

①の段階については、良い方法が関連書籍等で紹介されています。しかし、②については、良い方法を紹介している書籍等をあまり見かけません。そこで、ここでは②の段階についてお話ししたいと思います。

 

②の段階については、多くの人がノートや雑紙につづりを何度も書いて覚える勉強をしているのではないでしょうか。それは、昔から「つづりは書いて思えるしかない」という認識があるからだと思います。筆者自身も中学生の時に毎日のように単語を書く練習をしていましたし、それによって教科書に出てくる単語はすべて覚えられたという記憶があります。

 

2. 覚えられる生徒と覚えられない生徒

ただ、いくら書く練習が有効であると言っても、やみくもに書いているだけでは、つづりはなかなか身に付きません。長年生徒を指導していて、つづりを覚えられる生徒とそうでない生徒の間に、勉強の仕方にあるちがいがあることがわかっています。そのちがいとは何でしょうか?

 

<覚えられない生徒の練習法>

・単語の意味や使い方をよく理解しないまま書いている

・つづりを見ながら書き写している

・だまって書き写している

 

<覚えられる生徒の練習法>

・単語の意味や使い方をよく理解してから書いている

・つづりを見ないで書いている

・発音しながら書いている

 

それぞれの場合で、上記の1つまたは複数の練習の仕方をしているようです。したがって、単語をきちんと覚えるためには、<覚えられる生徒の練習法>のやり方で書く練習をすることが大事だということがわかります。

 

3. 具体的な練習方法

上記のようなちがいがあることから、単語を書く練習をする時にぜひ実行すると良い、具体的な3つのステップを紹介しましょう。

 

(1) 意味や使い方を理解してから書く

練習する単語の意味や使い方がわからないまま練習するというのは、意味のない「記号」を書いているのと同じです。記号には意味がないので、書いてしばらくすると、それを思い出すことができません。ですから、書く練習をする前に必ず意味と使い方を理解してください。

 

したがって、書く練習をするのは、基本的に「復習」として行うのが基本です。もし、「予習」の段階で書く練習をしている人がいるとしたら、おそらくそれは時間の無駄です。それが有効であると言うのであれば、その人は授業を受ける必要がないくらい学習内容が事前にわかっていることになります。

 

(2) つづりを頭に入れ、発音しながら書く

練習対象となる単語を見ながら書く練習をすると、結局は単なる文字の羅列を「書き写す」作業をしていることになります。これでは、どんなに練習をしても、記憶に残りません。大切なのは、書く前に必ずつづりを頭に入れ、それを頭の中で思い浮かべて発音しながら書くことです。ここで言う「発音しながら」というのは、実際に声に出さなくても、頭の中で発音するだけでかまいません。大切なのは、発音と一緒につづりを覚えることです。そうすることで、単語そのものの記憶を強化できますし、音からつづりを思い浮かべやすくなるからです。

 

「つづりを覚えるための練習なのに、つづりを覚えてから書けとは…」と言わないでください。単語1つであれば、その時に覚えられないという人はそれほど多くないでしょう。つづりの覚え方はいろいろあります。最も良い方法は、正しい発音のとおりに発音してつづりが思い浮かべられるようになることです。ですから、何度も何度もその単語を正しく発音し、その発音を聞いたら正しいつづりが思い浮かぶようになるまで、発音練習をしてください。

 

(3) 書いたら自分で答えを確認する

「なかなかつづりが覚えられない」という生徒のノートを見ると、まちがったつづりを書いているのに、そのまま練習している人が少なくありません。まちがったものを何度も練習して、まちがったつづりを覚えてしまう人もいれば、書くたびに異なるつづりを書いているのに気づかない人もいます。

 

自分のまちがいを自分で見つけることを「自己モニター」と言いますが、この作業ができるようにならないと力が付きません。よく自分でテスト問題を作ってやってみる人がいますが、その過程で答え合わせをすることも自己モニターです。他人に答え合わせをしてもらうのではなく、自分で自分のまちがいを直すという行為は、最近よく言われている「深い学び」、つまり真の学力を身につけるためにとても大切なことなのです。したがって、単語を書く練習をしたら、必ずそれが正しいつづりで書けているかどうかを確認してください。

 

以上が、単語のつづりを書く練習をすることによって覚えるための最善の方法の1つです。少し面倒だと思われるかもしれませんが、辛抱強く行ってみてください。今回の話を読んだ人には、英単語マスターになってもらいたいと願っています。(12/5/2018)