Bull shit!「牛のふん!」?

今回の表現もあまり良くないものとされていますが、その中では群を抜いてよく使われる表現なので、知っている人も多いかもしれません。映画やドラマでは、「ボーシェット」のように聞こえてきます。若い男性やあまりガラがよくない人が使う表現というイメージがありますが、最近では知性を感じさせるような女性でもあえて使っているのを耳にします。

 

さて、まず「ボー」と聞こえるのは "bull" という単語で、「雄牛」という意味があります。「ボ」に近い「ブ」の音で「ブル」と言うのが「ボー」に聞こえるようです。次に「シェット」は、「シット」と言ったらわかりやすいかもしれませんね。"shit" とつづり、「クソ(糞)」という意味の単語です。後者は、Shit!(クソッ!)という悔しい気持ちを表す時に単品で使われているのを聞いたことがある人も多いでしょう。"i" の音は日本語の「イ」よりも「エ」に近い音なので、「シェット」のように聞こえます。

 

つまり、bull shit は「ウシの糞」なわけですが、その見かけが大きいことや、何の役にも立たないどころか臭いだけのものだということから、Bull shit! と言えば、「大嘘つき!」とか「ふざけるな!」という意味で相手を罵るときに使うことばなのです。

 

筆者が最初にこのことばを耳にしたのは、今から約40年前の1983年~84年にアメリカの大学に留学しているときでした。ある晩、ドミニカ共和国出身のハウスメートと話をしているうちに電化製品の話になり、彼が持っていたパナソニック製のテレビとソニー製のウォークマン(ポータブルカセットプレーヤー)を見て、私が "These are all made in Japan." と言ったところ、彼は "No, they're all made in the US." と言うのです。そこで筆者が Panasonic と Sony がどのようにして日本から世界に広がって行ったのかを説明したのですが、彼は一向に信じません。筆者が "That's true!" と言うと、彼が "Bull shit." と言ったのです。

 

実は、言われた時点ではこの表現を知らなかったので、何を言われたのかわかりませんでした。しかし、その「音」だけは覚えていたので、後で辞書で調べて正式なつづりと意味を知ったというわけです。結局彼が私の話を信じてくれなかっただけでなく、筆者のことを大嘘つき呼ばわりしたことがわかりました。なんだかとても悔しかったのを覚えています。

 

余談ですが、そのハウスメートと口げんかしたのはそのときだけで、その後はとても仲良くしていました。彼にはいろいろなところに連れて行ってもらって貴重な経験をさせてもらいましたし、筆者はカレーライスや天ぷらを作ってご馳走してあげたりしました。そして、彼が先に故郷に帰るときは、涙涙の別れをしました。

 

話を元に戻しましょう。今回の表現は本当によく耳にする表現ですが、自分で使うには注意が必要です。不用意に使うと相手に悪い印象を与えかねないので、「意味は知っているけど自分では使わない」という扱いにしておいた方が無難でしょう。それでも使ってみたい人は、この表現を使っている人やその人の仲間といるときだけにした方がいいと思います。

 

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