日本語のような外国語

私たち日本人が普段何気なく使っている日本語の中には、本来は外国語から入ってきたことば(以下、「外来語」)であるのに、いつの間にか日本語のように認識されて使われているものがあります。カタカナで表記されていれば外来語だと想像されるものもありますが、ひらがなで表記されたり、中には漢字が宛てられたりしているものもあり、そのようなことばは語源を知らないかぎり元々日本語だと思ってしまいます。今回はそのような外来語の例をいくつか紹介します。

 

(1) 名詞

これが最も多い例です。外国から入ってきたときに日本に該当するもの(こと)が無かったために、そのまま根付いてしまったものと思われます。有名なものから「そうだったの?」と思われるものまで紹介しましょう。

 

◇「たばこ」

すっかり見なくなった街中の「たばこ屋」さん。カタカナでタバコと書くこともありますし、tobacco という英語表記も時々見かけるので、日本語ではないということに気付いている人も多いでしょう。元々は tobaco というポルトガル語として日本に入ってきたものです。

 

◇「かぼちゃ」

カタカナで「カボチャ」と書くこともあるので、なんとなく外来語かなと思うかもしれません。この野菜は、最初はカンボジアから輸入されていました。そうです。「カンボジア」→「カンボジャ」→「カンボチャ」→「カボチャ」と変化したというわけです。ちなみに、カボチャにあたる英語は一般的に pumpkin とされていますが、その場合はハロウィーンのジャック・オ・ランタン(jack-o'-lantern)でおなじみのオレンジ色のものを指します。日本で一般的に売られている緑色のものは squash というのが正しい英語名です。

 

◇「天ぷら」

外国人に人気のある日本料理といえば「寿司」と「天ぷら」。そのうちの1つが実は日本ではなかったというのは有名な話です。元々はポルトガルで「料理する」を意味する tenpero から来ているというのが一番強い説ですが、他にもスペイン語から来ているという説もあります。なお、日本語の「てんぷら」を英語表記する場合は tempura と tenpura の2通りがあります。

 

◇「背広」

漢字になってしまった外来語の代表格です。あまりにも漢字が意味までフィットしているので、語源を知らないと日本語だと思ってしまいますね。さて、「セビロ」という言葉の語源に関しては諸説あるのですが、主な説が2つあります。1つは、civil clothes(市民服)の civil[スィヴィル]から来ているというもの。もう1はロンドンで服の仕立て屋が多い Savile row(サビール街)から来ているというものです。どちらが本当かという議論には決着がついていませんが、外来語であるということだけはわかっています。

 

◇「お転婆」

男勝りに活動的な女の子のことを「お転婆娘」などと呼んだりしますが、この「おてんば」ということばも外来語です。語源はオランダ語で「不屈」を意味する ontembaar であるとされています。ただし、このことばが日本に入ってくる以前に日本語にも「御伝馬」(おてんば)ということばがあったので、それが宛てられたという説も有力とされています。

 

◇「簿記」

「まさか!」ですよね。「『帳簿録する』から来ているとばかり思っていた!」という人が多いでしょう。実は、元々は英語の bookkeeping から来ています。昔のひとは book の「(「ボ」に近い)「ブ」と keeping の「キ」だけを聞き取っていたということでしょうか。それにしてもうまい漢字を宛てたものです。

 

(2) 動詞

「~する」という行動を表すことばについても、元々は日本には無かったような人間の行動に対して「〇〇る」ということばが宛てられて日本語として定着してしまったものがあります。その作り方は「事故を起こす」という行為を「事故る」ということばにしてしまったのと同じでしょう。

 

◇「さぼる」

「サボる」と書くことがあることからも、この動詞が外来語であることを想像させます。元々はフランス語の「木靴を壊す」という意味の sabotage(サボタージュ)から来ています。さらにそのフランス語はオランダ語で「木靴」を表す sabot から来ています。過重労働などの仕事に不満を持っている職人たちが、「木靴を壊す」ことによって「抵抗の意思を示すために意図的に仕事を休む」という意味で使われるようになりました。それを日本では「サボタージュする」ということばにして「サボる」と短縮するようになり、さらにいつの間にか「(いやだから)仕事をしない」や「ズル休みをする」という意味で定着しました。

 

以上です。他にも面白いことばが見つかったら追加します。

 

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