否定にはいろいろな表現がある

みなさんが中学生でしたら、"否定"あるいは"否定文"はbe動詞や助動詞に not を付けたり、名詞の前に no を置いたりすることで表現できることを知っているでしょう。しかし、否定はこれだけではありません。そこで、ここではいろいろな否定の表現を見ていきましょう。中学生の人は復習と少し背伸びをした予習のために、高校生以上の人は復習のために読んでみてください。なお、例文の多くを "A NEW GUIDE to English Grammar<ニューアプローチ英文法>"(東京書籍)から拝借しています。 

 

1.否定の基本

まず、日本語と英語では否定の表現が大きくちがうことを理解しましょう。日本語は否定語を文の終わりに付けますが、英語ではなるべく文の前の方に置こうとします。文頭に来ることさえあります。


【日】トムはお姉さんほどピアノを上手に引くことはできない

【英】Tom cannot play the piano well as his sister. 


以上のことをおさえた上で、英語の否定の基本を確認してみます。

 

(1) not を使う例

① I am not interested in K-pop.(~ない)

② We don't have to go to school on Sunday.(~ない) 

 

①はbe動詞の文ですが、この場合は not をその後ろに付けることで否定の意味になります。②は一般動詞の文ですが、この場合は動詞の前に助動詞を置いてそれに not を付けることで否定の意味になります。

 

(2) no を使う場合

① I have no idea why she says such things about me.(何も~ない)

No one can live for two hundred years.(誰も~ない)

No smoking.(~禁止)

 

①は動詞 "have" の目的語である "idea" という名詞の前に no を置くことで否定の意味にしたものです。この場合の no は「0(ゼロ)の~」という意味なので、"have no idea" は「0の考えを持っている」ということになります。

②は主語の "one"(「人」。"man" とすることもある)に no を付けることで否定の意味にしたものです。①と同様に「0の~」ですから "no one" は「0人の人」ということになります。

③は街中でよく見かける表示に書かれていることばですね。行為を表す名詞(動名詞を含む)の前に "no" を置くことでその行為を「禁止する」という意味になります。それはこれを全文で表すと "No smoking is allowed here."(allow は「許可する」) または "Smoking is not allowed here." となるからです。

 

(3) 注意したい表現

① I don't think he will pass the examination.

② A: Do you think it will be hot tomorrow, too?

     B: I hope not.

 

①は日本語で「私は彼がその試験には合格できないと思う」ということを言いたいときの表現です。このような場合、英語ではふつうは "I think ~ not ...." とは言わず、①のように主節の動詞(think)を否定する言い方をします。その理由は「24. 『~ではないと思う』は I don't think ~. が普通?」で詳しく解説しています。

②は一見すると一般動詞 "hope" の直後に not が置かれていて、否定の基本にはずれているように見えますが、そうではありません。これは "I hope (that) it won't(=it will not be hot)." の後半の部分を "not"  だけで表したので、そのように見えているだけです。これについても「30. なぜ I hope not. と I'm afraid no." は文の最期に not  があるの?」で詳しく解説しています。

 

2.否定のバリエーション

否定には他にもいろいろな表現がありますので、それらをまとめてみてみましょう。

 

(1) 否定語 not や no を使わずに否定の意味にする表現の例

① I have never met such a strange person.(けっして~しない)

② If you don't go, neither will I.(~も…ない)

None of my friends live near here.(誰も~ない)

④ I have nothing to do with that man.(何も~ない)

 

①は「けっして~ない」という意味の副詞である never を使って否定の意味にした文です。これを「否定文」とするかは意見の分かれるところですが、否定の意味のある副詞を入れることで結果的に否定文と同じ意味にしています。

②は直前の内容を受けて「~も…ない」ということを言いたいときの定番の表現です。neither とは no+either のことで、「どちらも~ない」という意味の副詞です。直後の主語と助動詞の順番が逆になることに注意してください。

③は「どれも/誰も~ない」を意味する代名詞 none を使って否定の意味になる文です。none は "no one" または "not one" の省略だと考えられます。

④も③と同じように「何も~ない」を表す代名詞 nothing で否定の意味になる文です。nothing は "no thing" が一語になったものです。この文の全体の意味は「私はその男と一緒にすることは何もない」ということですが、ふつう「私はその男とは関係ない」と言い訳をするときに使われます。"have nothing to do with ~" で「~とは関係ない」という連語として覚えておくといいでしょう。

 

(2) 準否定語 1語で否定に近い意味にする表現の例

① We could hardly see the man in the dim light.(ほとんど~ない)

② He seldom goes to bed before midnight.(めったに~ない)

Few people will disagree with this judgment.(ほとんどいない)

 

は「ほとんど~しない」という程度を表す副詞 hardly を使って否定に近い意味にした文です。hardly 以外に scarcely という副詞もほぼ同様に使えます。

②は「めったに~ない」という頻度を表す副詞 seldom を使って否定に近い意味にした文です。seldom 以外に rarely という副詞もほぼ同様に使えます。

③は「ほとんどいない」という数を表す形容詞 few を使って否定に近い意味にした文です。few は数を表すときに使いますが、量を表すときは little を使います。a few や a little は「少し」という、どちらかというと肯定的な見方で言うときに使いますが、few や little は否定的な見方のときに使うことに注意してください。

 

(3) 部分否定 「すべて~なわけではない」という表現の例

① Science cannot answer all our questions.(すべての~に…するわけではない)

② Not all birds can fly.(すべての~が…なわけではない)

 

①は "not ~ all ..." で「すべての…に~するわけではない」という部分否定の意味になる文です。"not always ~." とすると「常に~するわけではない」という部分否定になります。

②は名詞の前に not all を置くことで「すべての/常に~が…のわけではない」という部分否定の意味になる文です。not all は主語の前に付けることが多いですが、目的語や補語の方を部分否定にする場合は not always を付けることが多いようです。

 

3.否定の慣用表現

ここではよく使われる否定の慣用表現を見ていきましょう。

 

(1) 否定語を含む表現

① They never meet without quarreling.(~するときは必ず…する)

② You cannot be too careful in driving a car.(いくら~してもしすぎることはない)

③ We don't know the value of health until we lose it.(…して初めて~する)

④ It will not be long before we meet again.(間もなく~する)

 

①は "never ~ without ..." で「…することなしにけっして~しない」ということから、「~するときは必ず…する」という意味で使われます。

②は "not ~ too ..." で「…すぎるほど~ない」ということから、「…しすぎることはない」という意味で使われます。

③は "not ~ until ..." で「…するまで~しない」ということから、「…して初めて~する」という意味で使われます。

④は "not long before" で「~の前は長くない」ということから、「間もなく~する」という意味で使われます。

 

(2) 否定の意味になる肯定の表現

① He is too old to work.(~すぎて…できない)

② He is far from a scholar.(~どころではない)

He is the last person we would want to come.(もっとも…しそうにない~)

Who knows what will happen tomorrow?(誰も知らない)

 

①は "too ~ to ..." で「…するには~すぎる」ということから、「~すぎて…できない」という否定の意味で使われます。

②は「~からは遠い」ということから、「~どころではない」という否定の意味で使われます。

③は「…する最後の~」ということから、「もっとも…しそうにない~」という否定の意味で使われます。

④は「誰が~を知っているのか?」ということから「誰も~を知らない」という否定の意味で使われます。

 

4.否定についてのまとめ

最後に、否定の特徴についてまとめておきます(これまでの説明にはなかったことも含みます)。

 

① 日本語と英語では否定の表現が大きく違う。日本語は否定語を文末に付けるが、英語ではなるべく文の前方に出そうとし、文頭に来ることさえある。

 

② 英語では一般に否定語として not を使う。be動詞の場合は直後に。一般動詞の場合は助動詞と一緒にして動詞の直前に置くのが一般的であるが、hope や be afraid などの場合はその語の後ろに置く。

 

③ ②以外にも、名詞の前に no を置いて結果的に文全体を否定的な意味にする方法もある。この場合、②の語を使うより強い否定の意味になる。

 

④ ②、③以外に、「まったく~ない」を表す never、「どちらも~ない」を表す neither、複数扱いで「誰も~ない」を表す none、単数扱いで「誰も~ない」を表す nobody、「何も~ない」を表す nothing などの否定語がある。また、「ほとんど~ない」を表す hardly や scarcely、「めったに~しない」を表す seldom や rerely、a が付けば「少し」という意 味になるが付かなければ否定語になる few や little などの準否定語もある。

 

⑤ 「すべて」「いつも」「まったく」などの“完全”を表す語の前に②の語を置くと、「すべて/いつも/まったく~なわけではない」という部分否定になる。他にも、否定語を含んだり否定の意味になる肯定の表現などの否定に関する慣用表現もあるので、使えるように覚えておく。

 

ここまでいろいろな否定の表現を見てきました。一口に「否定」と言っても様々なタイプのものがあることがわかったでしょう。まずは基本をマスターした上で、できるだけ多くの否定の形を実際に使ってみてください。

 

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