比較にはいろいろな表現がある

今回は、中学校2年生(最近は1年生?)で学ぶことが多い「比較」を取り上げます。ただし、中学校で習う基本的なものだけではなく、高校で習うやや難しいものも扱います。中学生の人は復習及び少し背伸びをした予習のために、高校生以上の人は復習のために読んでみてください。なお、例文の多くを "A NEW GUIDE to English Grammar<ニューアプローチ英文法>"(東京書籍)から拝借しています。 

 

1.比較の基本

英語で比較の文を作るとき、対象となる品詞は形容詞と副詞です。これらを使って「~と同じくらい…である」「~より…である」「もっとも…である」などと表すのが比較の文です。

 

(1) 形容詞の例

① Tom is as tall as Bill.(〜と同じくらい背が高い)

  Tom is not as tall as Bill.(~ほど背は高くない=~より背が低い)

② Tom is taller than Bill.(~より背が高い)

  Tom is more popular than Bill in his class.(~より人気がある)

③ Tom is the tallest of the three.(もっとも背が高い)

  Tom is the most popular in his class.(もっとも人気がある)

 

①は形容詞の原級を使った比較で、as ... as を使うことで「~と同じくらい…である」という意味の表現です。なお、not as ... as と否定にすると「~ほど…ではない」という意味になります。

②は形容詞の比較級を使った比較で、<形容詞+-er>または<more+形容詞>を用います。more を使うのはややつづりの長い(2音節の一部と3音節以上の)形容詞の場合です。than は「~より」という比較対象を後ろに置くための語です。

③は形容詞の最上級を使った比較で、<形容詞+-est>を用います。最上級の前に the を置くのが基本です。最上級の後ろにくる表現はそれが比較対象のものであれば "of the three”、範囲であれば "in his class" のように表します。なお、形容詞の最上級であっても the が付かないことがあるので、「28. 形容詞の最上級なのに the が付かない場合があるの?」を参照してください。

 

(2) 副詞の例

① Tom runs as fast as Bill.(同じくらい速く)

  Tom does not run as fast as Bill.(~ほど速く…ない=~より遅く…)

② Tom runs faster than Bill.(~より速く)

  Tom runs more carefully than Bill.(~より注意深く)

③ Tom runs (the) fastest of the three.(もっとも速く)

  Tom runs (the) most carefully in his class.(もっとも注意深く)

 

形容詞と副詞の比較級のちがいをわかりやすくするために、できるだけ使う単語や文の形をそろえてみました。副詞においても原級による比較、比較級による比較、最上級による比較があり、作り方や意味は形容詞の場合とほぼ同じです。(1)の①~③と比較してみてください。なお、副詞の最上級は the を付けないのが原則ですが、最近では the を付ける方が多くなってきました。それらの理由は「27. なぜ副詞の最上級には the が付かないの?」を参照してください。

 

また、よく形容詞の比較なのか副詞の比較なのかがわからないという声を聞きますが、簡易的な見極め方としては、「be動詞の後ろなら形容詞」、「一般動詞の後ろなら副詞」と覚えておくといいでしょう。例えば、fast は「速く」という副詞のほかに「速い」という形容詞でも使われますが、上記の見極め方によれば、(2)の②と③の fast が副詞であることがわかります。

 

2.比較の応用表現

比較の基本をおさえた上で、いろいろな比較の表現を見ていきましょう。

 

(1) 比較の程度の例

① Australia is about twenty times as large as Japan.(~の20倍広い)

② Light travels much faster than sound.(ずっと速く)

③ Keiko can play the piano by far the best in her class.(断然一番上手に)

 

①は原級の比較で程度を表す表現で、"~ times as ... as" で「~倍...な」という意味になります。程度を表す他の表現としては、just(ちょうど)、quite(まったく)、exactly(まさに)、almost(ほとんど)、nearly(もう少しで)などがあります。

②は比較級の前に much を置くことで「ずっと~」と強調する意味になります。他の表現としては、far(ずっと)、a lot(ずっと)、a great deal(ずっと)、a little(少し)、a bit(少し)などがあります。

③は最上級の前に by far を置くことで「断然、抜きんでて」と最上級をさらに強調する意味になります。他には、much(ずっと)も使えます。

 

(2) 結果的には同じ内容を表す異なった表現の例

① Mt. Fuji is the highest mountain in Japan.(もっとも高い)

② Mt. Fuji is higher than any other mountain in Japan.(他のどんな山より高い)

No other mountain in Japan is higher than [as high as] Mt. Fuji.(他のどんな山も~より[ほど]高くない

 

①は「富士山は日本一高い山である」ということを最上級を使ってもっともストレートに表現した文です。②はそれを「他のどんな山より高い」と比較級で表したものです。

③は主語に「他のどんな山」を持ってきて、それが「富士山より[ほど]高くない」と比較級や原級で表したものです。

 

なお、②と③で複数の山が想定されるのに mountain が複数形になっていないのは、他のすべての山を指していても、それらの個々の山と富士山を比較しているからです。まちがえやすいポイントなので注意しましょう。

 

項目タイトルを「結果的には…」としたのは、これら3つの表現はけっして「同じ意味の」文ではないからです。表現の仕方がちがえば、最も強く伝えたい内容は異なります。ただ、「富士山は日本で一番高い」という事実を伝えるという意味ではどれも同じだということを表すためにそのようなタイトルと例文を示しました。

 

3.比較の慣用表現

比較にはたくさんの慣用表現があるので、それらも確認しておきましょう。

 

(1) 原級の慣用表現

① Please come as quickly as possible.(できるだけ~)

② He is not so much a scholar as a journalist.(~というよりむしろ…)

 

①は "as ~ as possible" で「できるだけ~」という意味になります。"as ~ as 主語+can" とすることもでき、この文の後半は as quickly as you can となります。

②は "not so much A as B" で「AというよりむしろB」という意味になります。「BほどAではない」ということからそのような意味になります。

 

(2) 比較級の慣用表現

The more the teacher talked, the less I understand.(~すればするほど…である)

② A whale is no more a fish than a horse is.(~と同じで…ではない)

No sooner had the game started than it began  to rain.(~するやいなや…する)

 

①は "the +比較級, the +比較級" で「~すればするほど…である」という意味の表現です。more は much の、less は little の比較級です。

②は "no more A than B" で「Bと同じようにAも~ではない」という意味の表現です。例文は「馬が魚である以上にクジラは魚であるわけではない」というわかりにくい内容になっていますが、これは「馬が魚である」という事実と反する内容以上に「クジラが魚である」というわけがないという論理を表現したものです。

③は "no sooner ~ than ..." で「...より早く~ない」という意味になり、そこから「~するやいなや…する」という意味だと解釈できます。

 

(3) 最上級の慣用表現

① There were only fifty people at most.(多くとも)

② The situation is difficult, but we must make the best of it.(~を最大限に利用する)

 

①は "at most" で「多くとも」という意味になります。同様の表現では、at best(良くても)、at least(少なくとも)などがあります。

②は "make the best of ~" で「~を最大限に利用する」という意味になります。あまりよくない状況の中でもなんとかするという場面で使われる表現です。

 

4.比較についてのまとめ

最後に、比較の特徴についてまとめておきます(これまでの説明にはなかったことも含みます)。

 

① 比較の形を作るのは、形容詞と副詞である。比較の種類は、ア)原級を用いるもの、イ)比較級を用いるもの、ウ)最上級を用いるものがある。

 

② ①イ・ウの作り方としては、単音節の語と2音節の語の一部は語尾に-er, -estを付け、2音節の大部分の語と3音節以上の語には直前に more, most を置く。また、一部の語は不規則な変化をする。

 

③ ①アは、同じ程度を表す肯定文には as ~ as を用い、程度のちがいを表す否定文には not as/so ~ as を用いる。①イは、形容詞や副詞の直後に「~より」という意味の than を置く。①ウは、形容詞や副詞の直前に the を置く。ただし、その語が副詞の場合はそれを付けないこともある。

 

④ ①アでは、比較の程度を表す語として just, quite, exactly, almost, nearly などの副詞が使われる。また、「x倍の~」という場合は x times as ~ as と表す。①イでは、比較の程度を表す語句として much, a lot, a bit, a little などが使われる。①ウでは、程度を表す語句として much, by far などが使われる。

 

⑤ ①ア~ウのどれにもいろいろな慣用表現があり、会話や文章などでよく見かけるので、それぞれの表現と用法をしっかりと覚えておきたい。

 

ここまでいろいろな比較の表現を見てきました。中2の時に習う比較はその中のほんの一部です。ただ、その時に習った比較の”基本”をきちんと理解できていれば、残りの表現も意味を想像することはできるでしょう。

 

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