朱夏から白秋へ

3年半前に大きな手術をして約3ヶ月の病気休暇を取ったとき、妻に勧められて初めて読んだ『隠蔽捜査』。今野敏氏の代表作の1つですが、それ以来今野氏の本を60冊以上読んでいます。その中でも好きなのは、元キャリア官僚・竜崎伸也が主人公の『隠蔽捜査シリーズ』、警視庁東京湾臨海署強行犯係・安積剛志警部補が主人公の『安積班シリーズ』(または『ベイエリア分署シリーズ』)、警視庁強行犯係・樋口顕警部補が主人公の『樋口警部補シリーズ』です。いずれのシリーズも2回ずつ読んでいます。

 

先日、久しぶりに「樋口警部補シリーズ」の第2作『朱夏』を読みました。読むのは3回目だったのでストーリーはほぼ頭に入っていたのですが、タイトルがなぜ『朱夏』なのかということは抜け落ちていました。もちろん、話の内容から来ていることはまちがいないのですが、読む前はそれを思い出すことができませんでした。

 

タイトルそのものが出てくるのは最後の数ページのところです。しかし、改めて思い起こせばそこに至る間の全編にそのタイトルがモチーフとなっていることが描かれていました。件のページの表記(登場人物の台詞)によると、人生は青春、朱夏、白秋、玄冬と移り変わっていくとのことです。青春はよく使うので説明の必要がありませんね。朱夏は青春の後に来る燃えるような夏の時代、この本では誘拐された愛する妻のことを探し続ける主人公の刑事(40歳)のことを指しています。白秋は人生の終盤に入っった老齢期を指すようです。そして玄冬は人生のおわり、すなわち死を意味します。

 

この部分を読んだとき、定年退職を迎えて第二の人生を歩み始めた自分はちょうど朱夏から白秋に移り変わるところにいるのかななどと思いました。以前に読んだときはこの部分を何も考えずに素通りしてしまったようですが、今回は自分の人生に重ね合わせて読みました。おそらく今後はタイトルの意味を忘れないでしょう。(5/21/2022)

 

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