baby の複数形は「y を i に換えて -es をつける」ではない

教科書や参考書に「当たり前」のように書かれていることですが、実はよくよく考えるとおかしいことがわかります。最後まで読んで、目から鱗を落としてください。

 

まずは名詞の複数形の作り方を復習してみましょう。

① s をつけるもの

book  →  book[s]  egg  →  eggs [z]  orange  →  oranges [iz]

② es をつけるもの

box  →  boxes [iz]

③ y を i に換えて es をつけるもの

city  →  cities  [z]

上記のような説明は、どの教科書や参考書にもあるものです。

 

今回問題にしているのは上記の③です。それはなぜかを順を追って説明します。

 

(1) y の発音と i の発音のちがい

y は語末にくると「[i]イ(-)」という発音になるものが多くあります。すでに出ている citや babはその一例です(cycle のように途中にあると「アイ」と発音されることが多いです)。一方、i は「[ェ]イ」という発音で(「1.アルファベットの名前を読めても英語は読めない」参照)、「イ(-)」となることはありません。有名な "Bambi" は「バンビ」であって「バンビ(-)」ではないですよね。ですから、y を i に換えてもその部分の発音は「イ(-)」にはならないのです。

 

なお、ここでは便宜的に2つの文字の発音が長さのちがいのように説明していますが、実際には音の質もちがいます。日本語の「イ」に近いのは「[i]イ(-)」の方で、「[エ]イ」の方は「エの口の形のままイの音を出したときの音」のような音です。six の i の部分がその音で、正しく発音すると「セックス」と言っているように聞こえるのはそのためです。

 

(2) 「イ(-)」という発音のつづり

y 以外に「イ(-)」という発音のある単語を見てみましょう。

me,  we,  he,  she  

bee

sea,  tea

key

either,  receive

believe 

この中の最後の believe を見てください。この単語の中の「イ(-)」と発音する部分は ie のところです。つまり、ie というつづりは「イ(-)」と発音できることがわかります。

 

まだ納得してくれていない人は、次の2つの単語の組み合わせを見てください。

 

Bobby/Bobbie,  Tommy/Tommie,  Kathy/Kathie, Jimmy/Jimmie

 

上記2つの単語の組み合わせは、それぞれ Robert, Thomas, Katherine, James,  のニックネームです。人によって表記がちがっており、最後の「イ(-)」の部分が y の人と ie の人がいます。つまり、語末の y と ie は発音とつづりの関係からすると互換性があることになります。

 

ここまで見てきたところでもうおわかりでしょう。問題となっている部分を正しく言い表すには次のように説明した方がいいということになります。

 

baby の複数形は、y を ie に換えて -s をつける。

 

どうでしょうか。これまで常識だと思っていた説明が実は発音とつづりの関係からすると修正すべきものであることがわかります。

 

ちなみに、本ホームページのタイトルも今回の話を反映したつづりになっています。

つまり、NORY'sという筆者のニックネームに NO worRIEs(心配はいらない)という表現をかけているのですが、Y の部分を IE で受けているということです。

 

目から鱗が落ちましたでしょうか?(11/5/2018)

 

英語教師の方々へ

「教科書や参考書とちがうことを言っても生徒は信用してくれない。」そう思った方がいるとしたら、少し考えてみてください。

 

私たち教員が教員として価値のある存在でいるためには、生徒が自主的に学ぶ材料である教科書や参考書には載っていないことを教える必要があります。そして、それを論理的に自信を持って教えれば、むしろ「この先生の言っていることの方が正しい気がしてきた」と生徒の信頼を勝ち取ることができます。今回取り上げたことはそのようなことの一例です。ぜひ自信を持ってご自身の生徒に教えてあげてください。

 

なお、「y を ie に変えて s をつける」「語末の y と ie は発音とつづりの関係では互換性がある」という説明は、また別のところでも威力を発揮してくることになります。改めて取り上げますので、楽しみにしていてください。