【質問】
７月号 16ページのエリックのせりふに、I booked five tickets to Edinburgh for the 10:15. とありますが、この for はどういう意味・役割があるのでしょうか。また、the 10:45 の the は何を表しているのでしょうか。
【回答】
最初に前置詞 for のことですが、前置詞を正しく使いこなすためには、８月号で in, on, at を扱ったときにも述べたように、それぞれが持つ真の役割を理解する必要があります。この文には to という前置詞もあるので、一緒に説明します。
まず、for は「方角・方向」を表し、toは「到達点」を表す前置詞であることを理解してください。これは実在するものにも気持ちの上でのことにも適用されます。ですから、for はその後ろにある名詞が物であろうと人であろうと「（方向）に向かって」という意味になり、to は「（到達点）に」という意味になります。次の２つの文を見てください。
① I gave a birthday gift to my mother. 私は母に誕生日のプレゼントをあげました。
② I bought a birthday gift for my mother. 私は母に誕生日のプレゼントを買いました。
①で to が使われるのは動詞が gave だからです。「あげた」ということは相手にプレゼントが到達していることになります。②で for が使われているのは動詞が bought だからです。話者はプレゼントを“相手の方向に気持ちを向けて”買ったわけですが、まだそれを手渡したわけではないのでこのように言います。
さて、以上のことをご質問の文に適用してみましょう。five tickets はその後ろにある２つの前置詞句に修飾されています。to Edinburgh は行き先、つまり到達点ですから「エディンバラまでの」という意味になり、for the 10:45 は「10時15分発（の列車）に向かって」（つまり、「10時15分発用の」ということ）という意味になります。
次に定冠詞 the ですが、これを正しく使いこなすためにはやはりtheのもつ真の役割を知っている必要があります。それを一言で言うと、「その後ろにある名詞が話者の間で共通理解の得られている普通名詞であることを表す」となります。ですから、the の後ろには必ず普通名詞があります。ところが、ご質問の文にはそれが見えていませんね。実は、この部分は the 10:15 train の train が省略されてしまっているのです。この the はその train にかかる定冠詞です。なお、ではなぜこの train に the がつくのかというと、エリックが話題にしている列車はこれから乗ろうとしている10時15分発の列車のことだからであり、不特定の列車のことではないからです。
＜補足記事＞
前置詞 for については、「文法に関すること」の「6. 前置詞の使い方③：to, for の使い分けは難しくない」でもう少し詳しく説明しています。そちらも併せてご覧になってください。また、定冠詞 the については、同じく「文法に関すること」で４回にわたって詳しく説明しています。「the の使い方がよくわからない」という人はぜひそちらをご覧ください。筆者が実際に授業で指導して生徒から好評を得ている説明をお読みいただけます。