big の比較級はなぜ bigger なのか?

「そりゃあ、簡単だよ。『<短母音+子音字>で終わっている語は、最後の子音字を2つ重ねる』だからだよ。」と頭の中で考えた方は、ぜひこのページを読んでください。なぜなら、過去にも何度か言っていますが、その答えは「~の場合は…になる」という現象を説明しているだけで、「なぜ…なのか?」という質問には答えていないからです。現状でその答えが出せていない方は、ぜひこのページを読んで「目から鱗が落ちる」経験をしてください。

 

ただ、この問いに対する答えは、「6. sit の ing形はなぜ sitting なのか?」を読んでいただければ、このページの最後まで読まなくてもおそらくわかると思います。実は、最終的な答えはそれとほとんど同じだからです。ですので、ぜひともそちらを先に読んでいただいて、このページは結論を想像しながら確認のために読んでください。つまり、本ページは「6. sit の…」の兄弟ページと言えなくもありません。

 

ほぼどの世代の方も、比較(原級、比較級、最上級)の表現は中学校2年生で習ったことと思います。more, most を付けず、かつ規則的に形がかわる形容詞・副詞は、比較級は語末に -er を、最上級は語末に -est を付けることでできると習いました。そして、「big のような<短母音+子音字>で終わっている語は、最後の子音字を重ねて -er, -est をつける」と習ったはずです。 

 

そのとき、ほとんどの人が「そういうものなのだろう」と思ってそれを覚え、テストでもまちがえないように気をつけたと思います。でも、それが「なぜなのか」、つまり「なぜ『<短母音+子音字>で終わっている場合は、子音字を2つ重ねる』のか」、ということまでわかってこれを覚えた人はそう多くないと思います。かくいう筆者もその一人で、素直に(?)そのルールをしっかりと頭にたたき込んでいました。

 

前置きが長くなりましたが、本題に入りましょう。タイトルの疑問点を解決するための手順として、最初にこの疑問点を少しちがった角度から見直してみます。それは次のようなものです。

 

「big の比較級は、なぜそのまま -er を付けてはいけないのか?」

 

つまり、「big の比較級、最上級を *biger, *bigest としてはなぜだめなのか?」ということです(注:「*」は「実在しない語」という意味)。

 

ここまで来ればもうおわかりですね。そうです。もし *biger, *bigest とつづったら、これらは何と発音されるでしょうか。発音とつづりの関係に関する本ページの過去の記事をお読みになっていたり、これまでに発音とつづりの関係について勉強したことがある方なら、答えは簡単ですね。

 

・*biger としたら、「バイガー」と読まれてしまう。

 ※ tiger を「タイガー」と読むことからもそれがわかる。

・*bigest としたら、「バイゲスト」と読まれてしまう。

 ※digest を「ダイジェスト」と読むことからもそれがわかる。

 

すなわち、そのまま -er, -est を付けると、子音字の前にある母音字が「名前読み」になるので、「ビ(ッ)ガー」「ビ(ッ)ゲスト」とは読めなくなってしまうからなのです。そこで、そう読まれないために、短母音の直後にある子音字を2つ重ね、「子音字が2つあったら、その前にある母音字は「音読み」にする」というルールをつづり上に作ったわけです。ネイティブ・スピーカーはそれを見て瞬時に判断し、つづりのとおりに発音するのです。

 

いかがだったでしょうか? 今回も目から鱗が落ちたでしょうか? 次回もお楽しみに!

 

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