Do I make myself clear?「私は自分を透明にするか?」?

タイトルの日本語を見ると、何だか透明人間作りを研究している科学者が登場するシーンが連想されるでしょうか。意味と使われる場面をご存じの方には説明の必要はありませんが、そうでない方のために少し詳しくこの表現の成り立ちを見ていきましょう。

 

この表現は、筆者の大好きなSF映画やサスペンス映画、アクション映画などの台詞として頻繁に耳にします。特に、仕事上で上下関係がはっきりしている軍隊や警察とか、立場のちがいがはっきりしている敵同士の間で交わされることが多いです。

 

では、まずは直訳の意味を確認してみましょう。動詞の make は、<make + A + B> で「AをBにする」という意味で使えるのはご存じですね。A は名詞や代名詞、B は形容詞が来ることが多いようです。myself は「私自身」、clear は「透明な」ですから、make myself clear は「私自身を透明にする」となり、タイトルのような訳となります。

 

もちろん、これでは何のことかわかりませんから、この直訳は不適切であることは想像できるでしょう。そこで、clear を物理的な意味の「透明な」ではなく、精神的な意味の「はっきりした」としてみましょう。そうすると、make myself clear は「私自身をはっきりさせる」となりますね。

 

主語が I ですから、「私が私自身をはっきりさせる」ということになります。こうすれば、全体の意味が何となく見えて来ますね。そうです。「私の意見(考え)をはっきりさせる」とは「私の立場をはっきりさせる」という意味です。これが疑問文なわけですから、相手に「私の意見をはっきりさせているか?」と質問しているわけです。

 

ムムム…? かえってわかりにくくなりましたか? では、冒頭の説明にあるように、この表現が上下関係や立場のちがいがはっきりしている人同士の間で交わされる…、そしてより強い立場の人が弱い立場の人に言う表現だと言ったらどうでしょう? 「私の意見をはっきりさせているか?」を大きな声で強く言っているとしたら? さらに、この表現を言う人間は顔を相手の顔に近づけて言うことが多いとしたら?

 

そうです。この表現は、Do you understand? と言ってもいいところを、より強くはっきり言う時に表現なのです。つまり、「オレの言っていることがわかったか?」という感じですね。もちろん、Do you understand? であっても、一語一語をはっきり強く言うとほぼ同じニュアンスを相手に伝えることができます。しかし、Do I make myself clear? の方が形式張っている感じを強く出せるので、「立場が上のオレが立場が下のお前に言っているんだぞ!」という雰囲気をより強くあらわすことができます。

 

今回の表現は、まず日常会話でみなさんが使うことはないでしょう。ただ、映画等では頻繁に耳にするはずですので、字幕の日本語に頼り切って聞き逃すことなく、オリジナルの英語の面白さを味わってみてください。

 

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