「へっ?これのどこが『よく耳にする表現』として取り上げられる理由なの?」と思った方もいるかもしれません。そう思った方は、きっとこれを Hey, come on! のように人や動物を呼ぶときの表現だと思って発音した人です。あるいは、DA PUMPの『U.S.A.』のサビである Come on, baby, America. を思い浮かべた人でしょうか。それらはいずれも「おいで」という意味ですね。
しかし、今回取り上げる表現はカタカタで表記すれば「カ、モ~ン」(「カ」と「モ」を強く高く)というような調子で言ったときのものです。いったいどういう意味で使われているのでしょうか。
映画やドラマを見ているとよく聞く表現ですが、使われ方としては大きく2種類に分かれるような感じがします。
<例1> AがBを何かに誘う場面です。
A: Let's go to see a movie tonight.
B: Uh, no, thanks. I have a lot of work to do.
A: Come on! Why don't you forget about your work?
<例2> AがBに何か尋ねている場面です。
A: Why do you say I can't do that?
B: Because you're just a kid.
A: Come on! I'm not a kid anymore.
上記のような場合、それぞれどんな意味で使われているでしょうか。
<例1>では、Aの誘いをBが「仕事が忙しいから」という理由で断ったことに対して、Aが「仕事なんて忘れろよ」という台詞を言う直前に発していますね。なので、ここでは「いいじゃないかよ」とか「そんなことを言わないでさ」のように相手を強く誘うときに発することばということがわかります。
<例2>では、Aが何かをやらせてもらえない理由を尋ねたところ、Bに「お前はガキだから」と言われて、Aが「ボクはもうガキじゃない」と言い張る台詞の直前にあります。ここでは、「何言ってるんだよ」とか「冗談を言わないでくれよ」と相手に反論するときに発することばです。こちらは、すでに紹介した Give me a break. に近い使い方です。
もちろん、上記の2つも元々の「(こっちに)おいで」と意味がまったくちがうわけではありません。元の意味は同じなのに、場面のちがいや言い方のちがいよって別のニュアンスを相手に伝えている表現です。つまり、それを使うのには両者の間に別の意味があることの了解が得られていることが前提となります。
英語の初学者同士ではうまくニュアンスが伝わらないかもしれませんが、ネイティブであれば絶対にわかる表現なので、機会があったらぜひ使ってみたいですね。