関係代名詞は who, which, that だけじゃない

今回は、私たち日本人が英語学習を行う上で最も難しいと感じる後置修飾のさらに最難関とみなされる関係代名詞について説明します。そのうち中学校で学習するのは who, which, that ですが、ここではさらに高校で習うものも扱います。したがって、読者の方が中学生であれば、少し背伸びをした予習を行うつもりで読んでください。なお、例文の多く及び解説内容の骨子を "A NEW GUIDE to English Grammar<ニューアプローチ英文法>"(東京書籍)から拝借しています。 

 

1.関係代名詞の基本

関係代名詞についてはすでに「学習法に関すること」のコーナーの「15. 後置修飾の理解が英語学習の最大のポイント(その3)」で扱っています。さらにその基盤となる後置修飾そのものの理解に関しては同じコーナーの同名タイトルの(その1)~(その4)でシリーズとして扱っていますので、そちらをお読みになってください。ここではそちらとは別に改めて関係代名詞の基本をまとめてみてみます。

 

(1) 中学校で習う関係代名詞

下記の各文で、青字の部分が関係代名詞を含む節(関係節)で、緑色の斜体字の部分が関係節により就職される部分(先行詞)です。

  

① I know a boy who eats paper. (紙を食べる少年) 

The man who answered the phone said Mike was out.(その電話に出た

 

①と②はいずれも先行詞が人であり、かつ関係節の主語にあたるので、関係代名詞は「主格」の who を使っています。①は先行詞(a boy)が主文の目的語である例で、②は先行詞(the man)が主文の主語である例です。

 

③ Take the street which goes to the right.(右に行く

The letter (which) I received today had no stamp on it.(私が今日受け取った手紙

 

③と④はいずれも先行詞が人以外なので、関係代名詞は which を使っています。ただし、③は先行詞(the street)が関係節の主語にあたるので which は「主格」の関係代名詞、④は先行詞(the letter)が関係節の目的語にあたるので which は「目的格」の関係代名詞であることが異なっています。また、③は先行詞が主文の目的語で、④は先行詞が主文の主語である点は注意してください。なお、目的格の which は省略することができます。

 

⑤ I need someone that(=who) can do the work quickly.(その仕事を素早くできる誰か

The meat (that) I ate last night was very tough.(私が昨晩食べた

 

⑤と⑥は先行詞が人でも人以外でもよい関係代名詞 that を使っています。ただし、⑤は先行詞(someone)が関係節の主格にあたるので that は「主格」の関係代名詞、⑥は先行詞(the meat)が関係節の目的語にあたるので that は「目的格」の関係代名詞であることが異なっています。また、⑤は先行詞が主文の目的語で、⑥は先行詞が主文の主語である点は注意してください。なお、目的格の that は省略することができます。 

 

(2) 高校で習う関係代名詞

① This is the story of a man whose wife suddenly lost her memory.((彼の)記憶を突然失った妻を持つ

The boys whose names were called left the room.((彼らの)名前を呼ばれた少年たち

 

①と②の whose は、疑問詞として使われる場合は「誰の~?」という意味で使われることからもわかるとおり、ここでは先行詞を受けて「その人の~」という意味で使われています。これを「所有格」の関係代名詞と呼びます。したがって、whose は①では  the man's を意味し、②では the boys' を意味することになります。なお、筆者が中学生の頃はこれを中学校で習いましたが、今では高校で習います。

 

③ He is one of the men (whom) I can trust.(私が信頼することができる男たち

 

③の whom 疑問詞として使われる場合(ただしあまり多くはありません)は「誰を?」という意味で使われることからもわかるとおり、ここでは先行詞が人で関係節の中でそれが目的格のときに用いられています。つまり「目的格」の関係代名詞です。ただし、今では疑問詞としてもあまり用いられない語であるため、関係代名詞としても用いられることはあまりなく、that を用いるか省略してしまうことの方が多くなっています。

 

④ You can choose what you want for Christmas.(あなたがクリスマスにほしいもの

⑤ You can give the ticket to whoever wants it.(それを欲しがる誰でも

⑥ You can give the ticket to whomever you like.(あなたが好きな誰を/にでも

⑦ You can take whichever you need.(あなたが必要とするどちらでも

⑧ I'll give you whatever you need. (あなたが必要とする何でも

 

④~⑧の太字で赤字の語は、いずれも先行詞を含む関係代名詞です。

・④は the things which you want for Christmas と言い換えることができます。

・⑤~⑧はいずれも "-ever" という接尾辞が付いて「~でも」という意味で使われています。⑤の whoever は「誰を/にでも」なので、anyone who wants it と言い換えられます。⑥の whomever は「誰を/にでも」なので、anyone whom/that you like と言い換えられます。⑦の whichever は「どちらでも」という意味です。⑧の whatever は「何でも」なので、anything you need と言い換えられます。

 

2.注意すべき関係代名詞の用法

ここでは関係代名詞を使う際に注意すべきいくつかのことや一見すると他の品詞のようで関係代名詞として使われている例を説明します。

 

(1) 非制限(継続)用法の関係代名詞

1(1)で扱った関係代名詞はいずれも先行詞を直接修飾するものでした。言い換えると、関係節がないと先行詞の意味が確定しない、つまり文として意味をなさない(相手に正しい意味が伝わらない)文です。このような関係代名詞の使い方を「制限用法」(文法書によっては「限定用法」)と呼びます。これは、関係節が先行詞の意味を決定づける(=制限する)働きがあるということを表しています。一方、関係代名詞の使い方として、関係節が先行詞の意味を決定づける必要があるほど先行詞と密接な関係がない文もあります。こちらを関係代名詞の「非制限用法」(文法書によっては「継続用法」)と呼びます。その例をいくつか見てみましょう。

 

① I had three sons, who became doctors.(そして彼らは医者になった

② He wrote a long letter, which she sent back unopened.(そして彼女はそれを未開封で送り返した

My father, who is now in America, writes to me every week.(彼は今はアメリカにいるが

Mr. Allen, whose wife teaches singing, is himself a piano teacher.(彼の妻は歌を教えているが

Swimming, which is a good sport, makes people strong.(それはよいスポーツだが

Grammar, which perhaps you don't like very much, can help you to speak and write good English.(おそらくあなたはそれほど好きではないだろうが) 

 

まず見た目でわかるとおり、非制限用法では関係代名詞の直前に「,」(カンマ)が置かれ、その直前にある先行詞にあたる名詞(斜体の語)とは物理的(空間的)に“距離”が開いていることがわかります。実際に発声される際も間(ま)を置いて言います(読みます)。したがって、意味的にも who であれば「それでその人は…」、which であれば「それでそれは…」というように明らかに新たな情報を付け加えているものになっています。つまり、関係節の内容が無くてもそれ以外の部分だけで伝えたい意味は伝えられるところにあえて説明を加えているという構図です。

 

例えば、➀は「息子が3人いる」と説明したあとに「ちなみに彼らはみな医者になった」という新たな情報を付け加えているだけで、②は「長文の手紙を書いた」と説明したあとに「ちなみに彼女はそれを開封せずに送り返してきたけどね」と付け加えているだけなのです。③~⑥も同様ですが、これらはいずれも非制限用法の関係節が文の途中に挿入されているものなので、それを明確にするために関係節の前後にカンマが付けられていいます。

 

なお、➀の文を I had three sons who became doctors. と制限用法にした場合とのちがいは、こちらは「医者になった息子が3人いる」という意味になるので、その他の息子、つまり他に医者にならなかった息子もいるということを示唆することになります。また、③~⑥のように通常であれば関係節によって修飾されるはずのない名詞(固有名詞や説明する必要がない名詞など)を先行詞にした場合でも、非制限用法であれば関係節で修飾表現を加えることができます。

 

(2) 副詞節を導く関係代名詞

1.(2) で取り上げたいくつかの関係代名詞は副詞節を導くものとして使われることもあります。見た目からすると、接続詞のようにも見えます。

 

➀ Don't open the door, whoever it is.(それが誰であろうとも

Whichever day you come, we'll be pleased to see you.(どの日にあなたが来ようとも

Whatever happens, I won't change my mind.(何が起ころうとも

 

➀~③はいずれも "-ever" という接尾辞が付いた関係代名詞に導かれた関係節ですが、意味からもわかるとおりにそれらの関係節はいずれも副詞節になっています。通常関係代名詞は直前にある名詞を修飾する「形容詞節」であるわけですが、ここでは副詞節を導くものとして接続詞と同じような働きをしています。

 

3.関係代名詞についてのまとめ

最後に、関係代名詞の特徴についてまとめておきます(これまでの説明にはなかったことも含みます)。

 

① 関係代名詞は、代名詞と接続詞の働きを兼ねる語で、関係代名詞を受ける語句を先行詞と言う。

 

② 関係代名詞を含む部分を関係節と呼ぶ。その部分で主語の役目をするものをア)主格、目的語の役目をするものをイ)目的格、所有の働きをするものをウ)所有格と言う。

 ・アとして使われる語… who, which, that

 ・イとして使われる語… whom, which, that  ※省略されることが多い

 ・ウとして使われる語… whose

 

③ 関係代名詞のうち、それを受ける語が主に人のときに使われるのは who と whom、人以外のときに使われるのは which、どちらにも使われるのは that と whose である。

 

④ 関係代名詞には大きく2つの用法があり、直前にカンマが置かれないものを制限用法、カンマが置かれるものを非制限(継続)用法と言う。前者は関係代名詞を含む節が文を完成させる上で重要な役目を果たすが、後者は一端完結した文に新たに説明を加えるときに用いるものである。

 

⑤ ②~③の関係代名詞以外に、受ける語を含む what、「誰でも」を表す whoever, whomever、「どちらも」を表す whichever、「何も」を表す whatever、「人/物のように」を表す as、「~ しない人/物」を表す but がある。

 

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