母音と同じく、いくつかの子音の発音も、英語らしい発音を決定づけます。そもそも子音の中には日本語の音には存在しないものもあり、それを日本語っぽく発音すると別の単語に聞こえてしまうことがあります。
そこで、ここではそれらを取り上げます。各項目でリストした単語は筆者が思いついたものばかりですので、重要な単語が抜けていたらすみません。2段以上あるものは、対象の音が語頭にあるもの、語中にあるもの、語尾にあるもの、などごとにまとめてあります。
キモは、母音のときと同様に、「正確に」かつ「慎重に」です。気を抜くとすぐにジャパニーズ・イングリッシュ風の発音になってしまうだけでなく、まったく違う単語だと思われてしまいますから、気を付けてください。
なお、本ホームページでは実際の音声を流すことはできませんので、ネット上で発音を聞くことができるサイトを探して、それらの単語の発音を練習してみてください。
(1) "f" の音に関して
この音は日本語にはない音です。ローマ字(ヘボン式)では「ハ行」の音を "ha, hi, fu, he, ho" と表記することからも他の4つの音と違うことはわかるでしょう。しかし、決して "hu" ではないので注意してください。 発音の仕方は、上の前歯を下唇にあてて、その間から両方にこすらせるようにして息を出します。ただし、「フゥ」と母音を付けないようにします。「フッ」と息を吹きかける要領です。なお、この音を出すつづりは "f" 以外に、"ph" や "gh" などもあります。
fast, fence, find, for, fun
after, effect, gift, lift, office, staff,
cliff, deaf, elf, half, if,
phone, photograph
enough, laugh, tough
(2) "l" の音に関して
この音は日本人が最も発音が不得意な音の1つです。かなり意識して舌の位置を決め、慎重に発音しないと、"r" の音だと思われてしまいます。発音の仕方は、舌の先を上の前歯の根元に強く押し付け、そのまま息を舌の両側から抜くようにして「ル」と言います。もしこの文字が語末にあった場合は、発音した後も舌はその位置に残したままにします。たとえば、school であれば、最後の音を言い終わった後にも舌が残っているので、舌の裏側が相手に見えます。ネイティブ・スピーカーの口元を見てみてください。
lantern, lens, listen, lot, lunch
allow, eleven, illustration, old, ultra
all, eel, will, owl, school
(3) "r" の音に関して
この音はローマ字のラ行に使われていることから、日本語にある音だと思われていますが、実際には日本語にはない音です。日本語はラ行の音を発音するときに、舌の先の上部が上あごについてから放すことで出る音ですが、英語の "r" の音は舌先はどこにもつけずに出す音です。例えて言うなら、舌足らずの「ラリルレロ」を言っているような音になります。
ran, red, ring, robot, run
arrest, error, irregular, orange, unreal
(4) "s" の音に関して
この音自体は「ス」の無声音ですから、日本人にとっても簡単なのですが、日本語で言うと「シ」の音を出すときだけは注意が必要です。それは、日本語の「サシスセソ」は、"sa", "shi", "su", "se", "so" だからです。しかし、英語は "si" です。この音の出し方は、「ス」の音の直後に「ィ」を付けるようにして(実際には「ィ」の音は出さないで)「スィ」と言います。なお、つづりとしては他に "c-" や "sc‐" もあります。
◎以下の組合せの左右の単語を交互に言ってみましょう。
sit - shit, sin - shin, sing - shing, sim - shim
see - she, seat - sheet
〈"s" 以外のつづりのもの〉
cease
decease
scene, scenario
(5) "t" の音に関して
これも(4)の "s" と同じです。ローマ字では「タチツテト」に用いられますが、実際の音は "ta", "chi", "tsu", "te", "to" です。つまり、"ti" と "tu" が日本語にない音です。 したがって、この2つの音は、それぞれ「ティ」「トゥ」と2文字を使って表す必要があります。1980年に亡くなったアメリカ映画の大スター、Steve McQueen は、1960年代までは「スチーブ」と表記されていましたが、1970年代になるとより原音に近い「スティーブ(ヴ)」と表記されるようになりました。一方、スポーツは常に「スポーツ」ではなく、単数(sport)であれば「スポートゥ」であることに注意してください。
◎以下の組合せの左右の単語を交互に言ってみましょう。
tin - chin, tick - chick, tease - cheese, teat - cheat
ant - ants, eat - eats, it - its, cat - cats, sport - sports
(6) "th" の音に関して
このつづりには2つの音があります。舌の位置が特殊なので、日本人にとってもっとも発音が難しい音です。気を抜くと、ただの「ス」または「ズ」と言ってしまいます。発音の仕方は、舌の先を上下の前歯の間に軽く置き、舌と上の前歯の間をこするように息を出して音を出します(一方は喉を鳴らさない無声音、もう一方は喉を鳴らす有声音です)。したがって、これらの音を出した瞬間は、相手に自分の舌先が両方の歯の間から見えているはずです。"l" と同じく、慣れるまでは毎回意識を舌先に集中させていないと正しい音が出ません。特に、語中や語尾にこの音があるときが要注意です。
〈無声音〉
thank, theme, think, thought, thumb
athlete, anthem, ethics, Uther
seventh, ninth, oath, hundredth
◎次の3つの単語を違いに注意して連続で言ってみましょう。
sank - thank - tank, sink -think - tink
〈有声音〉
than, them, then, these, those, though, thus
brother, either, father, mother
bathe, breethe, clothe, with
(7) "v" の音に関して
この音も日本語にはなく、気を抜くと "b"(ブ)の音になってしまいます。最近は両者を区別するために、日本語でも「ヴ」と表記することが増えてきました(例:ホンダ ヴェゼル Vezel)。発音の仕方は、舌と口の形は "f" と同じにして、こちらは息を出すときに声帯を震わせて音を出します。つまり、有声音です。また、"b" はためた息を爆発させるように出す音(破裂音)であるのに対して、"v" は息をこするように出す音(摩擦音)である点も違います。
value, very, view, volunteer, vote
average, ever, seven, ivory, over
curve, serve, twelve
(8) "w" に関して
この音は日本語の「ワ」(wa) の "w" の部分の音に近いです。しかし、woman を「ウーマン」と発音したら、音が違います。発音の仕方は、唇を丸めて、その唇だけで音を出す感じです。あえてカタカナ表記すると、「ウォマン」のような音です。
walk, wax, web, will, window, women, work
(9) "y" の音に関して
この音は「イエス」(yes)に使われていることから、日本語の「イ」と同じ音だと思われていますが、実際には違います。それは、この音が母音ではなく子音(半母音)であるということからもわかります。発音の仕方は、口を「イ」の形にしたまま喉の奥をさらに緊張させ、強く「イェ」のように出します。日本語のヤ行の「ヤユヨ」の音の出だしの音だと思ってください。発音記号だと、[j] で表される音です。つづりとしては他に、"u-" もあります。
yacht, yes, yield, you, yummy
use, unit, unite, usual, UV
beyond, reuse, reunion
(10) "z" の音に関して
この音は「ザジズゼゾ」に使われますが、実際の音は "za", "ji", "zu", "ze", "zo" となるので、「ジ」のときに注意が必要です。発音の仕方は、「ズ」に「ィ」を付けて「ズィ」と言います。「シ」と「スィ」の違いと同じだと思ってもらえばいいでしょう。つづりは他に、"si-" や "sea-" もあります。
zee, zeal, Zealand, zipper, zinc
using, rising, disease
【まとめ】
実は、細かいことを言えば、他にも日本語にはない音("d", "ng", など)があるのですが、上記のものほど発音は難しくない、またはそれほど気にしなくてもよい、ものなので、省略しました。
いかがたったでしょうか。母音に続いて子音も日本語にはない英語独特の発音をマスターすれば、かなりネイティブ・スピーカーに近い発音になることがわかったと思います。
ぜひしっかり練習して、「単語レベルであればネイティブ並みの発音ができる」と自分で思えるようになるまで、練習してみてください。