今回は「39. <give (物) to (人)>と<give (人) (物)>は同じ意味ではない」と同様に「38. 5文型とは?どうやって見分けるの?」の補足記事です。もともとは大学の「学習英文法」の授業で学生の発表内容として議論されたものですが、それをもとにさらに思考してみます。中学生や高校生には少し難しいかもしれませんが、チャレンジしてみてください。
5文型を習うと、自分が出会う英文が第何文型なのかを突き止めたくなります。出会う多くの英文は比較的簡単に何文型か判断できますが、中には何文型なのかまったくわからないものや判断に迷うようなものがあります。今回タイトルにあげた文は後者にあたるかと思います。
タイトルの文は「主語」「動詞」「目的語」「to不定詞」という4つの要素で構成されていますから、5文型の中では第4文型(SVOO)か第5文型(SVOC)のどちらかではないかと予想することができます。ところが、最終的にそのどちらであるかを決めようとすると、少し面倒な議論が待っていてなかなか決めきれません。
では、具体的な文を使いながらそれを見ていきましょう。
I told him to turn off the light.
第4文型も第5文型も<S+V+O>までは一緒ですから、問題となるのは上の文の to turn off the light をどうとらえるかということになります。「38. 5文型とは?…」の両文型の見分け方からすると、次のような考え方の候補が出てきます。
ア)「to不定詞 is O」が成り立たたないなら第4文型
⇒Oと to不定詞はいずれも目的語(O+O)
つまり、この文には「彼に」と「灯りを消すこと」の2つの目的語がある
イ)「to不定詞 is O」成り立つなら第5文型
⇒Oと to不定詞は「主」と「述」の関係(O+C)
つまり、この文には「彼」という目的語と「灯りを消す」という目的語の行動を説明する補語がある。
上記のどちらの説を取るかでどちらの文型になるかが決まるはずです。
実は、筆者は長年「第4文型」と考えてきました。それはこの文の to turn off the light は「灯りを消すこと」という不定詞の名詞用法だと考えていたからで、論理的に考えてまちがいないだろうと思っていました。英文法の大家として有名な江川泰一郎先生の文法書(例えば本コーナーの記事で度々引用させていただいている『ニューアプローチ英文法』(東京書籍))でも第4文型の中にこの文は入っています。
ところが、大学の「学習英文法」で5文型を扱うにあたって再度いろいろ調べてみると、この形の文を第4文型とするものと第5文型とするもの両方が出てきます。特にネット上の記事では第5文型とするものがむしろ多いくらいです。ただ、その場合は「O is C」の関係が成り立っているはずですが、「 "him" is "to turn of the light"」にはなっていません。もちろん。OとCは「主」と「述」の関係にはなっています。
一方、最近の解釈としてこの形の文は動詞によって第4文型のものと5文型にあてはまらないものの2つがあるという考えも見つかります。この考えは以下のように説明されています。
〇第4文型に使われる動詞の例
① Nancy asked me to drive her home.
➁ We told her to be careful.
〇5文型にあてはまらない動詞の例
③ I want him to do what is right.
④ I expected the President to sign soon.
①と➁の動詞の文は筆者の考えと同じと言えます。しかし、③と④の動詞の文では、③は him to do what is right(彼が正しいことをすること) 全体が、④は the President to sign soon(大統領がすぐに署名すること) 全体がそれぞれ動詞 want、expect の目的語と考えられるという考えが示されています。実は、筆者も第4文型か第5文型かの再解釈の思考過程で「『Oが to不定詞すること』という部分全体がVの目的語ではないのか?つまり<S+V+[O+to不定詞]>ではないか?」という考えを持ったことがありました。
<結論>
さあ、ここまで読んだ読者の方は、説明が理解できてすっきりした、頭の中がごちゃごちゃになってしまった、疲れて考えるのがいやになった、のどれかではないかと思います。そこで、これ以上この話に深入りするのはやめて、筆者の結論を述べたいと思います。
【結論】<S+V+O+to不定詞>の文を何文型とするかはいろいろな説がある。Vが tell、ask の場合は第4文型と考えられるが、それ以外のVの場合は第5文型とするにも無理があり、5文型にはあてはまらない。そもそもすべての英文を5文型にあてはめようとすることには無理がある。
以上です。