<give (物) to (人)> と< give (人) (物) >は同じ意味ではない

今回は「38. 5文型とは?どうやって見分けるの?」の補足記事です。同記事の中の「第3文型と第4文型の書き替え」のところで、「その件については改めて別のページでお話ししましょう」と書いた「その件」について改めて取り上げます。

 

さて、みなさんが高校生以上であれば、次のような問題に出会ったことがあると思います。

 

【問】次のア、イの2つの文がそれぞれ同じ意味になるように空所に適語をいれなさい。

 

① ア)I will give some chocolate to her.

  イ)I will give (          )(          )(          ).

 

➁ ア)I bought a present for him.

  イ)I bought (          )(          )(          ).

 

この問いはそれほど難しくはないですね。答えは次のようになります。

 

① I will give (  her  )( some )( chocolate ).

➁ I bought (  him  )(    a    )( present ).

 

この問いのキモは、第3文型(SVO)の文を第4文型(SVOO)の文に書き替えることができるかということです(空欄の答えを色分けしたのも第4文型の2つの目的語を明確にするためです)。したがって、昔から英文法や英作文の問題集、そしてテストでは必ずと言っていいほど登場してきた問題です。5文型が明示的に出されていなければ、中学校の問題集やテストでもこのような書き替え問題を見たことがある人は少なくないでしょう。

 

このような問題は文型の理解やその運用力を試すものとしては価値のあるものだと言える一方、このような問題のせいで多くの英語学習者がまちがって認識してしまっていることがあります。それは問題文で「2つの文が同じ意味になるように」とあるため、それぞれの2文が「同じ意味である」と思ってしまっていることです。また、それを指摘しない英語の先生は、その先生自身もその問題点に気づいていない可能性があります。

 

過去のこのコーナーのいろいろな記事で何度も指摘しているように、2つの文の文型が異なれば2つの文の意味はけっして同じではありません。では、2つの文はどこがどう意味がちがうのでしょうか。

 

それは-これも過去の記事に書いたことですが-英文でもっとも大切な(新しい)情報は文の最後に来るということです。これを「エンド・フォーカス」(end focus)と言います。したがって、それぞれの文で本当に(もっとも)伝えたい内容は最後の目的語となります。例えば、それを上記の①の文で見てみましょう。

 

① ア)I will give some chocolate to her.

  イ)I will give her some chocolate.

 

①のアは「チョコレートを持っているだけど…。そうだ、彼女にあげよう」という状況で発せられる文で、大切なのは「彼女に」という情報です。一方のイは「彼女に何をあげようか…。そうだ、チョコレートをあげよう」という状況で発せられる文で、大切なのは「チョコレートを」という情報です。つまり、それぞれどの情報をもっとも伝えたいかということを判断して使い分けるべき文型でありけっして2つの文は「同じ意味」ではないのです。これは➁の2つの文においても同じです。

 

以上のことから、自分で①や➁のような状況で何か言いたいときに、どちらの文型を使って言うかで相手に伝わる意味が変わるということにもなります。どちらか思いついた文型の方で言ってしまった場合、それが伝えたい内容と合致していればいいですが、そうでない場合は自分の意図とはちがう意味を相手に伝えてしまうことになります。

 

繰り返しになりますが、第3文型と第4文型ではもっとも伝えたい内容が異なりますので、それが文末に来る方を的確に選択してください。

 

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