「先生、品詞ってどうやって見分けるんですか?」「形容詞と副詞のちがいがわかりません」…。これらは中学生からよく受けた質問です。これに「句」とか「節」とかが付くとさらにややこしく、高校生や大学生でも「よくわからない」という人は少なくないでしょう。そこで、今回はタイトルの内容、すなわち上記で言えば後者についてできるだけわかりやすく説明してみようと思います。なお、単品の品詞の見分け方、すなわち上記では前者の中学生の疑問は解決できていることとします。
最初に次の6つの英文を、太字の斜体字にした部分に注意して読んでみてください。
① Training elephants takes patience.
② He doesn't care for films about war.
③ She stopped to look in a shop window.
④ He didn't notice that his shirt was torn.
⑤ Let's find a quiet corner where he can walk.
⑥ Take an umbrella in case it rains.
上記の文を読んですぐにタイトルにあげられた見分けができた人は続きを読む必要はありません。一方、よくわからなかったという人はこの先をしっかり読んでください。
1.句と節の見分け方
太字&斜体字で強調された部分に着目してもらうと、①~③のそれは「句」で、④~⑥のそれは「節」です。そう説明されてから改めて見て気づくことはないでしょうか?
わかり易い方から言うと、④~⑥の強調部には主語と動詞があります。主語と動詞がある、つまり文として成り立っているように見える部分を「節」と呼びます。それを「文」と呼ばないのは、その部分がそれが含まれる文の一部でしかないからです。つまり、文の中にもう1つ文のような構成のものが入っている部分を「節」と呼びます。
一方、①~③の強調部には主語と動詞がそろっていません。しかし、複数の単語で1つのまとまりのある意味を持った表現にはなっています。それぞれ、意味的にまとまりのある表現(意味は次項で確認)です。このように、複数の単語でまとまりのある意味になり、「節」のように主語と動詞がそろっていない表現を「句」と呼んでいます。
以上のことを、改めてまとめてみると…
・「句」も「節」も複数の単語でまとまりのある意味の表現になっている。
・文の中で主たる主語と動詞以外に主語と動詞で構成されている部分を「節」、主語と動詞で構成されていない部分を「句」と呼ぶ。
2.名詞句、形容詞句、副詞句の見分け方
では、①~③の「句」の部分をもう少し詳しく見ていきましょう。
① Training elephants takes patience.
この文の強調部は「像を訓練すること」という意味の表現です。「~すること」は、動きを表すことばですが、それだけで完結していて、それ以外の単語を修飾したり影響を与えたりはしません。つまり、複数の単語で cat, tennis などの名詞(1語)と同じ働きの表現になっています。そのような表現を「名詞句」と呼びます。ここでは、動詞 train(訓練する)の ing形、すなわち動名詞の形で「~を訓練すること」という名詞句を構成しています。
② He doesn't care for films about war.
この文の強調部は「戦争についての」という意味の表現です。「~についての…」はその後に何かが続きそうな表現ですね。実際にここではその前にある films(映画)という名詞に掛かっています。名詞を修飾する単語は形容詞です。その形容詞と同じような役割を複数の語で構成された句ではたすので、この部分を「形容詞句」と呼びます。なお、ここでは前置詞(about)と名詞で構成された句で後ろから修飾(後置修飾)しているので、その句を前置詞句と呼びます。同じように後置修飾に使われる形容詞句には、他に不定詞を使ったもの(A)や現在分詞や過去分詞を使ったもの(B)などもあります(修飾される名詞は斜体字の語)。
(A) I want something to drink.
(B) Look at the boy running over there.
③ She stopped to look in a shop window.
この文の強調部は「ある店のウインドーを見るために」という意味の表現です。「~するために…」もその後に何かが続きそうですね。この場合はその前にある stopped(立ち止まった)という動詞に掛かっています。形容詞を修飾したり動詞に係ったりする単語は副詞です。その副詞と同じような役割を複数の語で構成された句ではたすので、この部分を「副詞句」と呼びます。
3.名詞節、形容詞節、副詞節の見分け方
次に、④~⑥の「節」の部分を詳しく見ていきましょう。
④ He didn't notice that his shirt was torn.
この文の強調部は「彼のシャツが破れていること」という意味の表現です。この部分は主語(his shirt)と動詞(was)がある節ですが、同時にこの部分は主動詞 notice(気づく)の目的語にもなっています。つまり「~を/に」にあたる単語と同じ役割を果たしているわけです。そのような単語はたいてい名詞ですので、このような節は「名詞節」と呼ばれます。なお、that は名詞節を導く接続詞としてよく使われます。そして、直後の部分を話し始めるきっかけとして、notice を受けて「(気づいたことは)以下のような内容です」という意味で使われています。また、名詞節の中の動詞 was が過去になっているのは、この文の主動詞である notice の否定語の助動詞 didn't が過去形であるためで、これを「時制の一致」と言います。ただし、会話ではしばしば省略されます。
⑤ Let's find a quiet corner where he can walk.
この文の強調部は「彼がそこで歩くことができるような…」という意味の表現です。「~できるような…」はその後に何か続きそうな感じがします。この場合はその直前にある corner(名詞)に掛かっています。名詞に掛かっている単語、つまり名詞を修飾する単語は形容詞です。その形容詞と同じような働きをする節は「形容詞節」と呼ばれます。もちろん、英語を話す人は日本人が戻って読んで確認するように話すわけではないので、where は corner を受けて「それはどんな場所かと言うと…」というようにその後に出てくる表現を導く役として使われています。なお、この節は関係副詞 where を先頭に持つ関係節でもあります。
⑥ Take an umbrella in case it rains.
この文の強調部は「雨が降った場合を考えて…」という意味の表現です。「~を考えて…」もその後に何か続きそうですね。この場合はその前の部分すべて、すなわち「傘を持って行きなさい」という部分に掛かります。文(この場合は命令文)全体に掛かるような単語は副詞です。その副詞と同じような働きをする節は「副詞節」と呼ばれます。なお、"in case ~" は「~の場合の用心に」「~するといけないから」などを表す連語で④の that や ⑤の where のような接続詞の働きがあります。つまり、「次のようなことがあるといけないので…」のような意味でそれ以降の表現を導くものとして使われています。
4.まとめ
以上のことをまとめると、これらを見分ける方法として次のようなことを覚えておくといいでしょう。
ア)名詞句/節…複数の語で事物の名称や「~すること」という意味のことばとなり、文の中で名詞と同じ働き(主語、目的語、補語になる)をするもの
イ)形容詞句/節…複数の語で名詞を修飾する意味のことばになり、形容詞と同じ働きをするもの
ウ)副詞句/節…複数の語で形容詞、動詞、文の残りの部分全体を修飾する意味のことばになり、副詞と同じ働きをするもの
どうしたか。一度で理解しきれなかった場合は、何度も読み返してみてください。