今回の話題は、みなさんが大学生以上であれば多くの人がお世話になったであろう、高校生以下であれば多くの人が今お世話になっている(あるいはこれからお世話になるであろう)本に書かれている表記から思いついたものです。その本とは A NEW APPROACH to English Grammar(東京書籍,1982)です。
件の本の著者は江川泰一郎氏で、江川氏と言えば筆者ぐらいの年齢の者にとっては“英文法の教科書・参考書の神様”として有名です。筆者が高校生のときの英文法の教科書も江川氏のものでしたし、大学時代からずっとお世話になってきた『英文法概説』(金子書房,1953)という本も江川氏の著書でした。みなさんの中には江川氏をご存じない方もいらっしゃるかもしれませんが、自分が使っていた(使っている)英文法の教科書や参考書を見ていただければ、氏の名前がそこにあるかもしれません。
さて、筆者が某大学で教えている「学習英文法」という授業では冒頭に紹介した本を教科書に使っているのですが、そのp.116、「2. 否定」の「#86 注意すべき not」に次のような例文が載っています。
(2) Will it rain tomorrow?
-I hope not. (=I hope it won't.)
そして、少し下の方に次のような説明があります。
(2) I hope not. 「雨が降らなければいいと思う」であるが、相手のことばを受けて hope に直接 not をつける。be afraid も同じである。
Do you think he will recover soon?
-I'm afraid not. (=I'm afraid he won't.)
英文法に詳しい人や勘のいい人でしたら、この説明で何を言わんとしているかがわかると思うのですが、筆者のような専門外の人間や生徒・学生には少し説明が足らないように思います。
件のページを読むと、「否定文の多くは don't などの否定形の助動詞で否定文を作るが、I hope や I'm afraid の場合は not を後ろに付ける」と読み取れてしまう可能性があります。直後の( )の補足でそうではないことがわかるのですが、これだけでは説明が十分ではありません。さらに、(2)の説明文が誤解を助長させてしまっているように思います。そこで、筆者なりの易しい説明をしてみると次のようになるでしょうか。
「相手の発言を受けて I hope ~. とか I'm afraid ~. と言う場合は、後半の「~」の部分が否定の内容のときはそれを not だけで表すことがあり、もはやそれが普通(慣用表現)になっている」
このような説明があれば、not がなぜ件の位置にあるのかがわかりますね。
なお、さらに I hope ~. と I'm afraid ~. の使い方のちがいを明確にしたい場合は、「I hope は『望んでいる』ということなので後ろに続く内容は"起こってほしいこと"になり、I'm afraid は「恐れている」ということなので後ろに続く内容は"起こってほしくない"ことになる」という説明でどうでしょうか。
上記の説明に合う例文としては次のようなものがあります。
〈ピクニックに出かけるので晴れてほしいとき〉
① I hope it will be sunny tomorrow,.
② I'm afraid it will rain tomorrow.
〈日照り続きなので雨が降ってほしいとき〉
③ I hope it will rain tomorrow.
④ I'm afraid it will be sunny tomorrow.
同じ表現を使っているのに、何を望んでいるかのちがいで後半の部分がそっくり逆になってしまうというのはおもしろいですね。
そして、上記の発言を聞いてそれに同意するなら、各組の上段(①と③)と下段(②と④)の文に対してはそれぞれ
・上段に対して…I hope so, too.(そのように願っています)
・下段に対して…I'm afraid so, too.(残念ながらそのようです)
となります。この2つの文の "so" は、それぞれ上の①~④の文の後半の内容を指します。なお、",too" を付けたのは、前者の発言と同じ表現(I hope ~/I'm afraid ~)を使っているからです。
以上のことをまとめると、相手の発言を受けて I hope ~. や I'm afraid ~.と言う場合、「~」の部分はそれが肯定の内容であれば "so"、否定の内容であれば "not"、という一言で表せるとなります。
いかがだったでしょうか。タイトルの疑問は解決したでしょうか。I hope so!