八掛け学習で満足していたら怖いことになる

今回の話は、筆者の学校では中学校1年生に話していることなので、主に中学校1年生向けの話になります。ただ、もしかしたらそれより上級生の人にも参考になるかもしれません。

 

勤務校でこの話をしたときの経験からすると、最初にタイトルの「八掛け」ということばの意味を説明する必要がありそうです(誰も知らなかったので…)。まず、「八掛け」は「はちがけ」と読みます。意味は「八を掛けるから八倍のことか?」というとそうではなく、「八割」と同義、つまり80%または0.8という意味です。主に商売で使われることばで、「売価を1,000円とすると、仕入れ値はその八掛けかな。」などと使います。この場合、仕入れ値は1,000円×0.8=800円くらいということですね。

 

さて、ここからが本題です。タイトルの意味するところは、「十分な学習成果の8割程度の成果で満足していると大変なことになるぞ」ということです。「ええ~? 8割もできていればいいんじゃない?」という人もいるでしょう。でも、その発想とそれに基づいた勉強が後々「怖いことになる」ということを言っています。

 

それを、長年教えていると中学生2年生からよく受ける、ある相談内容を元にお話ししいましょう。その相談内容とは次のようなものです。

 

「先生、1年生の時はテストで80点くらい取れていたんですけど、2年生になったら60点台しか取れないんです。どうしたらいいでしょうか?」

 

これに対して、「2年生になって勉強量が減ったの?」と問うと、たいていは次のような返事が来ます。

 

「いいえ、1年生の時と同じように勉強しています。」

 

もしかしたら、みなさんの中にも同じような悩みで先生に相談したことがある人がいるかもしれません。一見すると、どこも悪い点は無さそうで、どこに成績が下がった原因があるのか不明なような気がします。しかし、実はここに大きな”落とし穴”があります。それはいったい何でしょうか?

 

1年生の時にテストで80点取れていたというのは、一般的には立派な成績と言えます。しかし、80点であるということは、あとの20点分を理解していなかったということですね。つまり、本来身につけておいてほしいことの80%(=0.8)しか身についていないということになります。では、これを繰り返していくとどうなるでしょうか?

 

・0.8+.0.8=1.6

 →これは 1+1=2の80%。だから80%理解できていることになる。

・0.8+0.8+0.8=2.4

 →これは 1+1+1=3の80%。だから80%理解できていることになる。

 

これは本当でしょうか? 実はこの"計算式"は英語学習の実態を表していません。

 

英語学習は"積み重ね"によって成り立っています。以前に学習したことの上にどんどん積み重ねていくようなイメージです。特に、1年生で習う内容はその後の学習のすべての元になるような基礎・基本なので、余計に1年生のときの学習が大切になります。そうすると、1年生の時に0.8の人がその理解度のまま2年生で0.8の学習をしたときは、次のような式で表される学習結果となります。

 

① 0.8×0.8=0.64

 

相談に来た生徒が60点台しか取れなくなったのは、どうやらこの式に表されるような学習をしていたからかもしれません。では、同じようなことをあと1年間続けて3年生になったら…?

 

② 0.8×0.8×0.8=0.512

 

この式のとおりであるとすると、50点台まで下がってしまう可能性があります。こうなると、「自分は英語が不得意になってしまった…」と思うことになるでしょう。0.8ですらこのとおりです。これが1年生の時に60点、つまり0.6の学習成果で、それをそのまま3年生まで続けていたら…。その数字はみなさんを恐怖に陥れるでしょう。

 

<ケース1>

では、今あなたが1年生で、①のようにならないようにするにはどうしたらいいでしょうか?

 

そうですね。最初の「0.8」を限りなく「1」に近づけること、つまり現時点での理解を完璧にするということです。それが1年生の時にできていれば、次の「0.8」はもはや0.8ではなく、もっと高い数字になるでしょう。

 

<ケース2>

では、今あなたが2年生で、①のようになっているけれども②のようにしたくない場合はどうしたらいいでしょうか?

 

そうですね。2つ目の「0.8」を限りなく「1」に近づけることが大切です。ただし、それには2つ目の「0.8」に影響を与えていると思われる1つ目の「0.8」も限りなく「1」に近づけたいものです。つまり、1年生の学習内容を完全にマスターするということです。

 

この記事をみなさんがいつ読んでいるかわかりませんが、もし時間的に余裕のある長期休業(夏休み、冬休み、春休み)の前であれば、ぜひその直後に来る長期休業中に「0.8」を「1」にする学習をしてください。善は急げです。頑張りましょう!

 

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