今回は、アルファベットを構成する「線」についての話です。最後まで読んでいただくと、「なんだ、そんなことか」と思われるかもしれませんが、辛抱強く読んでみてください。
日本語の漢字、カタカナ、ひらがなと比較すると、英語のアルファベットは「簡単だ」という印象があります。なぜそう思うのでしょうか。おそらく、次のような答えが返ってくるでしょう。
・画数が少ないから
・単純だから
「単純だから」という答えに対して、どういう点が単純だと思うのでしょうか。
・「はね」とか「はらい」とかがない
・微妙な傾きなどを気にしなくていい
このような印象のあるアルファベットですが、よくよく観察してみると、そのような印象を裏付ける具体的なことが見えてきます。例えば、ブロック体の大文字を一画ずつ分解してみると、次の4つの線でできていることがわかります。
・縦線 ・横線 ・斜線 ・曲線
そうなんです。縦線、横線、斜線を「直線」とすれば、アルファベットは、「直線」と「曲線」の2種類の線で構成されているということがわかります。しかも、日本語のように「はね」や「はらい」「傾き」といった微妙な調整も必要はありません。
以上のように、アルファベットはたった2種類の線で構成された簡単な文字であるということに改めて気づいたと思います。「なんだ、そんなことか」でしょうかね。
アルファベットの書き方を指導なさる場合に、次のようなことを考えたことがありますか?
・大文字と小文字のどちらを先に練習するか。
・どの文字から練習するか。
「そんなことは決まっている。大文字のAからだよ。」
なぜそうなのでしょうか?
「自分もそう習ったし、それ以外は考えたこともない。」
これでは私たち教師に主体性がなさ過ぎますね。そこで、この2つのことについて考えてみましょう。答えの鍵は、「負担の少ないものから多いものへ」という、生徒のことを考えた指導になっているかということになります。
① 大文字と小文字のどちらから?
これについて講習会等で現職の先生に尋ねると、一瞬の沈黙の後に、ほぼ全員が「大文字から」と答えます。「一瞬の沈黙」の意味は、教科書もペンマンシップも大文字が先に書かれていますし、先生ご自身も大文字から練習した経験があり、これまでの指導でもそれが当たり前だと思ってやってこられたからでしょう。
次に、大文字を先に練習するメリットを尋ねてみると、次のような答えが返ってきます。
・直線と曲線が画毎にはっきりしていて書きやすい
・すべて4線の上3線を使うので、わかりやすい
確かに、上記の利点は小文字にはないものですね。実際に、生徒がアルファベットを認識する上でも書く上でも困難を感じるのは、小文字の時の方が多いように思います。これはどうやら大文字から始めた方がよさそうですので、ここでもその考えを採用します。
② どの文字から?
この問いについては、現職の先生方はみなさんが「キョトン」とします。それは、おそらく「アルファベット順に」が当たり前だと思っているからでしょう。しかし、先述した「負担の少ないものから多いものへ」という考えからしたときに、はたしてその順番でいいのでしょうか?
本ページの結論として、アルファベットは直線と曲線の2種類の線で構成されているということを確認しました。また、直線は縦、横、斜めの3つであることにも注目しました。では、4つの線の中で、最も簡単に書けそうなのはどの線でしょうか?
これを生徒に尋ねると、たいてい以下のような順位が付きます。
① 横線 ② 縦線 ③ 斜線 ④ 曲線
さらに、最も難しいのは「直線と曲線が混じっている文字」と答えます。
そうだとすると、生徒の負担を考えた場合、上記の上位の線で構成されている文字から練習させた方がいいのではないかという考えに至ります。そこで、筆者の勤務校では、20年ほど前より、最初にアルファベットを書く練習をする際に、以下のように分けたハンドアウト(現物はこちら)を使って指導しています。
① 横線と縦線のみのもの
E, F, H, I, L, T
② ①+斜線のもの
A, K, M, N, V, W, X, Y, Z
③ 曲線のみのもの
C, O, S, (G), (Q)
④ 直線と曲線のもの
B, D, G, J, P, Q, R, U
いかがでしょうか。ほんの少し考えてみるだけで、それまでの指導を見直すことができます。基本中の基本であるアルファベットの指導にも、まだ改善の余地があるものですね。(11/23/2018)