この表現も英語やドラマなどで度々耳にします。筆者がこの表現を初めて聞いたのは40年近く前のことですが(後述参照)、以来この表現が気に入ったのか、映画やドラマの台詞に出てくると、「おっ、また出てきたな…」と一人で喜んでいます。
では、細かく見てみましょう。この文は、動詞 get で始まっているので、命令文であることがわかります。その get は後ろに形容詞や副詞が来ると、「〜になる」という意味になります。次の out は「外に」という意味の副詞ですので、get out は「外に出る」ほどの意味になります。一方、out of で「〜から外へ」となりますので、get out of で「〜から外へ出る」となります。この後ろに here が来れば、「ここから出ていく」となりますが、この場合は命令文ですから、「ここから出ていけ!」と相手に命令する表現になります。
そうすると、件の表現はタイトルのような意味になるのですが、文字通りの意味で使われることはまずありません。「(お前は)街から出ていけ」ということは、「そのくらいの大変なことをしろ」ということで、それが転じて「冗談を言うな」とか「何を言っていんだ」という意味で使われています。なお、通常であれば town は可算名詞で a town または the town となるところですが、冠詞が付いていないのはここでの意味はどこかの街というわけではなく、「都市部」という概念を表しているからです。
筆者が初めてこの表現を聞いたのは、1985年に公開された映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(Back to the Future)でした。同作品にはこの表現が2カ所出てきています。
① 物語の最初の方で、主人公の高校生マーティーと恋人のジェニファーが夜のデートの計画について話しているシーン。
Jennifer: Does your mom know about tomorrow night?
Marty: Nah, get out of town! My mom thinks I'm going camping with the guys.
ジェニファーが「明日の夜のことをお母さんは知ってるの?」と質問したことに対して、それをきっぱり否定するシーンです。ここでの件の表現の翻訳は、「まさか!」となっています。なお、原作シナリオにおける件の表現は、実際のマーティーの発音の仕方を表現していて、"Get outta town." となっています。
② 物語の中盤で、1955年にタイム・スリップした主人公のマーティーが、後に彼の父親となる高校生のジョージと話をしているシーン。
Marty: What are you writing?
George: Uh, stories. Science-fiction stories, uh, visitors coming down to earth from other planets.
Marty: Get out of town! I didn't know you did something creative.
1985年の時点では、何の取り柄もない、だらしない感じの父親が、30年前の高校生のときは物語を書くという創造的な活動をしていたことに驚くというシーンです。ここでの件の表現の翻訳は、「うそだろ!」となっています。なお、原作シナリオではここも "Get outta town." となっており、上記の1行目も "Whatta you writin?" となっています。
また、この表現は『バック・トゥ・ザ・フューチャー Part II』、『バック・トゥ・ザ・フューチャー Part III』にもそれぞれ1カ所ずつ出てきます。
いかがだったでしょうか。自分で使うには少々勇気がいりますが、映画やドラマに出てきたときには、この表現の面白さをそのまま味わってみてください。