今回の表現もときどき耳にします。文字どおりの直訳の意味(「あなたは私を見ている」)で何の問題もないのですが、ちょっと洒落たことを言いたい場面で使われる表現だということを理解していただくために取り上げました。
実際に使われている場面を見てみましょう。下の会話は前回の「Push the envelope.」で紹介した映画の場面と同じ場面で発せられます(前回の会話の続きにあたります)。
Journalist A: Who was the best pilot you ever saw?
Cooper: Who was the best pilot I ever saw? Well, I'll tell you. ...(この後は独り言のようにいろいろな人のことをブツブツと言う。前回の記事参照)
Journalist B: Mr. Cooper, Mr. Cooper, speak up!
Cooper: Who is the best pilot I ever saw?
Journalists: Yeah!
Cooper: Well, ah, you're looking at him!
Everybody: (laughs)
「今までに見た中で誰が最高のパイロットか?」という質問に対して、「あなたは(今)彼を見ているよ」、つまり、「眼の前にいるよ」=「自分だよ」と言っているのです。
日本語であれば、「それは私だよ」か少し洒落て「眼の前にいるよ」と言うのだと思いますが、それを「あなたは(今)彼を見ているよ」といかにも客観的に説明しているところが面白いですね。この場合は、確実に相手を笑わせる意図があって言っているように思います。
ただ、自分のことを客観的に言う表現は別に珍しいわけでも特別な場面であるわけでもありません。例えば、次のような電話でのやりとりでしばしば聞くことができます。
A: Hello.
B: Hello. May I speak to John, please?
A: He's speaking.
このような場面でも、自分が対象の人物であるのに「彼(女性なら「彼女」)が話している」とまるで客観的に眺めているかのような表現を使うことがあります。もちろん、"It's me." とか "I'm John." などとも言います。
これも少し洒落た表現ではありますが、比較的よく聞く表現なので、ぜひ使ってみてください。もっとも相手の携帯電話に直接かけるような場合は、そもそも上記のようなやりとりはないかもしれませんが…。