Back to square one.「1㎡へ戻れ」?

今回の表現も映画やドラマで度々耳にするものです。ただ、たいていはあまり大きな声ではっきり言われないので、字幕を理解することに集中していると気が付かないかもしれません。


まずは小さく分解して意味を確認してみましょう。back to 〜 は「〜に戻って」ということですね。square は名詞なら「四角」や「正方形」、形容詞なら「四角い」や「正方形の」が一般的な意味ですが、転じて「真面目な」とか「かたぶつの」という人柄を表す言い方としても使われます。また、数学で(実生活で)「平方の」という意味で使われるのも多いですね。square meter で「平方メートル」を表します。タイトルで「1㎡」としたのはそこから来ています。


さて、ここまで来ても本当の意味は見えてこないので、実際の会話の表現から想像してみましょう。


【場面】ある理系の研究室で

A: Oh, my god!  Our machine has been broken!

B: Do we have to do the experiment again from the begining?

A: Yeah, we are back to square one.


実は、上記の会話では2行目の do the experiment again from the begining という台詞に今回の表現の意味が出ています。「もう一度最初からその実験をやる」ということですね。これを何かのゲームをしている最中のことにあてはめたら何と言うでしょうか?


そうです。「振り出しに戻る」ですね。日本語でこのように言うのは、すごろくで最初の場所、すなわち「振り出し」からやり直すことから来ています。英語で square one と言うのは、これが盤上のゲームの最初の四角います目を差しているからです。そこへ back するということですね。日本語でも英語でも最初からやり直すことを「振り出しに戻る」という言い方をするというのは面白いと思いませんか?


筆者が最初にこの表現を耳にした(気付いた)のは、筆者の大好きな映画である『ライト・スタッフ』(The Right Stuff、1983年)を見たときでした。主人公のチャック・イェーガーが初めてジェット機で音速の壁を破った時にものすごい爆発音が地上で聞こえ、それを聞いた人たちが「また失敗したか…」という気分になって、ある男性が We are back to square one. とつぶやきました。字幕では「また振り出しに逆戻りだな」と出ていたので、「へえ、そういう言い方をするんだ」と思ったのものです。


ちょうどこの原稿を書いている最中に見た『FBI インターナショナル』(FBI INTERNATIONAL)と『スター・トレック ディスカバリー』(STAR TREK: DISCOVERY)というドラマのある1話でも、捜査/作戦に失敗したというシーンで上記とまったく同じ台詞が聞こえてきました。


使う場面はそれほど多いとは思えませんが、いつかは使ってみたい表現です。自分で使わなくとも、映画やドラマでこの表現が聞こえてきたら、そのときの使われ方をしっかりチェックしておいてください。

 

 元に戻る