今回の表現も頻繁に耳にするものです。実際に、筆者は数日前に見たドラマでも使われていたのを耳にしました。タイトルの表現が最もよく使われる表現ですが、2つの単語の間に一桁の数字が入ることも少なくありません。では、細かく見て行きましょう。
まず、前置詞の for ですが、タイトルのように「〜のために」という意味で使われることが多いですね。これはこの語の本来の意味が「〜に向かって」であるからです(「 to と for の使い分けは難しくない」参照)。一方、「〜の間」という時間を表すこともあるのもご存知のとおりです。では、ここではどちらの意味で使われているか…? それは次の decade を見てから判断しましょう。
decade は前置詞 for の直後にあることから名詞であることがわかります。この単語のポイントは、dec(a)- という接頭辞です。例えば、みなさんが知っていてとこばでは「デシリットル」(deci-litter)や「12月」(December)が思い浮かぶかもしれません。
まず、deci-litter とは「1/10リットル」、つまり10ccのことでしたね。次に December は元々は「10月」であったのに、7月生まれのジュリアス(Julius)・シーザー(ユリウス・カエサル)と8月生まれのアウグスタス(Augustus)という2人のローマ皇帝が、自分の名前をJuly と August として割り込こませたせいで、その後の月が後ろに2ヶ月ずれてしまったというのは有名な話です(実はそれでずれたのではなく、暦の開始時期を変えたときにずれてしまい、その後にもともとの7月と8月の名称を July と August に変更しただけだというのが事実だという話も読んだことがあります)。
この2つの単語を見ただけで、dec(a)- という接頭辞がどんな意味を持っているかがわかりますね。そうです。「10」です。この接頭辞の語源は古くはギリシャ語の deka- から来ています。そして、decade は元々中期フランス語の「10冊組の本」という意味で使われていたものが、「10年」という意味でも使われるようになったそうです。
つまり、decade とは「10年」を表します。decades はこれに具体的な数字が前になくて複数形になっているので、「何十年」という不特定な10年単位の数字を表します。そうすると、その前にある前置詞 for は「~のために」ではなく、期間を表す「~の間(に/は)」という意味になることがわかります。
したがって、タイトルの表現は「何十年もの間」という意味になるわけです。The remain of the plane has been there for decades.(その飛行機の残骸はそこに何十年もある) などのように使われます。
正確な数字を示したいときというよりも、なんだかとても長い年月(ただし、数十年レベル)を表したいときに大変便利な表現なので、ぜひ使ってみたいですね。もちろん、for three decades(30年間)のようにより具体的な期間に使うこともできます。