これはまた随分偉そうな表現が出てきました…。いえ、いえ。この表現の本当の意味はむしろその逆の印象を相手に与えるものです。今回はこの表現を見ていきましょう。
実は、この表現の前には必ず誰かがある別の表現を言っています。つまり、この表現をいきなり言うということはありません。よくある具体的な会話を見てみましょう。
A: It's an honor to meet you, sir.
B: The honor is mine.
これはどういう場面かと言うと、AとBが会ったことをAが喜んで「あなたにお目にかかれたことは(私にとって)名誉なことです」と言ったことに対して、Bが返事をしている場面です。Bが言っているのは、「その名誉は私のものです」、つまり「名誉だと感じているのは私の方です」ということになります。したがって、偉そうに威張っているどころか、むしろ自分がへりくだって相手に対して敬意を表していることになります。
honor(イギリス英語では honour)はかなり固い表現なので、上記のような会話は階級とか上下関係がはっきりしている間柄で交わされます。A の台詞の最後に sir があることからもそれがわかりますね。
この honor の部分が pleasure(喜び) になっている表現もあり、こちらの方がもう少し気軽に使われているような印象があります。
A: It's my great pleasure to meet you.
B: The pleasure is mine.
A: Thank you very much for your kindness.
B: The pleasure is mine.
上の会話では「私の方こそ嬉しいです」ということを表しています。下のような会話で使われると、ほとんど You're welcome. すなわち「どういたしまして」というくらいの意味で使われていることになります。You're welcome. よりも少し洒落た感じを相手に与える表現ですので、少し気取ってみたいときに使ってみたら面白いかもしれません。
最後に、筆者がこの表現を取り上げる直接のきっかけとなったある映画の場面を取り上げます。それは『ネメシス/S.T.X』(Star Trek: Nemesis)の最後の場面です。長年副長として仕えてきたライカーがエンタープライズ号を去ることをピカード艦長に報告に来ました。2人はしみじみとことばを交わします。
Commander Riker: Serving with you has been an honor.
Captain Picard: The honor was mine.